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AFTER STORY about YOU and I

2019.04.19

物語は、いつだって前に進む。

「なんか完結していない気がするんだよな」

「YOU」の完成を経て、改めて二人で対談したとき。会話の終わり頃に小田さんがこぼした言葉の意味を、今更だけれど頭のなかで反芻している。

完結していないとは、どういうことか。
そのときは、なんとなく頷いた。
でも小田さんの言葉に合わせて、いい加減に頷いたわけではない。「完結していない」という言葉が与える“予感”が、感覚としてわかるような気がしたから、そうですねと頷いた。でも論理的に説明しろと言われると少し困ってしまう。

「いきものがかりの曲はお前がつくって、それを聖恵ちゃんが歌ったら、完結するけれど。なんか俺とやったこの曲は、また違う完結を見るような気がするんだよな」

「お前はこれから、どうなるんだろうねぇ」

そう言って、小田さんは笑っていた。
楽しみだと思ってくれているようだった。


一度、廃案になりかけた1曲目のデモ。
小田さんとのやりとりのなかで、自分ひとりでその曲を最後まで完成させることになり、数カ月のあいだを置いて久しぶりに歌詞を見てみると、そこに書かれていた言葉は小田さんが絶えず自分に語りかけてくれていた言葉そのものだった。

小田さんは「そこまでは考えていないよ」と笑うだろうが、やがてこの楽曲の前に、水野がまた戻ってくることがあるだろう、またこの言葉に向き合う日があるだろうと、もはや最初からわかっていたのかと思うほど、だった。

「10年後に聴いたら、あのとき小田さんが言っていたことは、そういうことだったのか。この歌はそういう意味の歌だったのか、と思う日がくるような気がするんです」

自分もそう小田さんに伝えた。「YOU」は完成したわけではなく、物語を始めただけなのかもしれない。たしかにそういう意味において、この歌は完結していない。

制作に戻った「I」は歌詞に若干の加筆修正を加え、小田さんには“良し”とされなかったかたちをあえて押し通して進めた。

小田さんに提出して採用されなかったデモをそのままアレンジャーのejiさんに渡し、デモでのフレーズや構成を可能な限り踏襲してもらうかたちで、さらにブラッシュアップしてもらった。

小田さんが気に入ったフレーズも残したままだし、ドラムフィルで持っていきすぎだなと指摘されたところも、あえて残した。
ejiさんがさらに繊細に再構築してくれたおかげで、より解像度を高めて、なおかつ熱量を失わないサウンドが実現できて、いままで経験したレコーディングとも違う達成感があった。

こういう瞬間があるから、音楽をやめないでよかったよな、とも素直に思った。

この年齢になって、まだ“始まる”物語があるのは幸せなことだ。いや、そんなことはそれこそ小田さんを前には言えないか。まだ、長い道のりが自分にもあると信じて、進むしかない。


いつだったか。

小田さんにこんな主旨のことを言われたことがあった。


「長い時間が経って、ふと振り返ってみて。そこから眺めれば、ああ、そういうことだったのかと思う。ただそれだけのことです。でも今はまだ“ここ”にいる。だから、今いる場所で、志をもって頑張りなさい」

小田さんは、これまでの日々に悔いは無いと言う。

もちろんまだ余力はあるけどね、と笑いながら

「すべて自分の能力の範囲内で、懸命に…選んで、戦って…きたんだな」

そう言った。


小田さんとのやりとりについては多くを喋りすぎたけれども、ここからはまた、音楽にそそぐ。音楽にしていかなくてはならない。

今、静かに思っている。

HIROBAはまだ始まったばかりだ。この場所が、これからどんな物語を生んでいくのか。想像もつかないし、想像などつかなくてもいい。

ただ、ここで旗を振り続けようという決意だけが、自分のなかにある。

そうだ。

あの背中がそうであったように。

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HIROBA
YOSHIKI MIZUNO

Photo/Kayoko Yamamoto
Hair & Make/Yumiko Sano

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