読む『対談Q』 水野良樹×武部聡志 第2回:音楽の瞬間の輝きをみんな欲している。
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読む『対談Q』 水野良樹×武部聡志 第2回:音楽の瞬間の輝きをみんな欲している。

HIROBA

HIROBAの公式YouTubeチャンネルで公開されている『対談Q』。こちらを未公開トークも含めて、テキスト化した”読む”対談Qです。

今回のゲストは音楽プロデューサーの武部聡志さんです。

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力任せに弾くピアノは伝わらない。


武部楽器の演奏でもそうなんだけど。僕はピアノを弾いているじゃない? 力任せに弾くピアノって伝わらないんだよね。

水野:なるほど。

武部:いい音を鳴らすには、力をたたきつければいいわけじゃない。ベースでもギターでもピアノでも。その力加減みたいなものが、きっとボーカリストとかアーティストにもあると思うんだよね。

水野:ぶつければいいってもんじゃない。難しいなぁ。それどこで掴んでいくんですか? 若いときとか、僕らがバンドを始めた頃はガーってやってしまいがち。

武部:もちろんね、それはね。

水野:でもレコーディングでお世話になるミュージシャンのみなさんが、口をそろえておっしゃるのは、「ひとの音をどれだけ聴くか」とか、「今鳴っている音楽に対して自分の音楽がちゃんとフィットしているか」とか。ただぶつけるだけじゃなくて、自分の居所を見つけるんだと、それぞれの言葉でおっしゃるイメージがあって。今、武部さんのお話もそれに近いのかなって。

武部:そうね。みんなで音を鳴らす場合、自己主張だけじゃ成立しないじゃない。僕は二十歳ぐらいでプロになって。ずっとフロントに出るひとを支える立場というか。そういうスタンスで仕事をしてきたから、そのひとが今、どういう精神状態なのかとか、そのひとがどうすればちょっとでも輝きを増すことができるかとか、いつも考えてやってきたのね。

水野:うんうん。

武部:だからそれによってピアノも、あるときは寄り添うように弾くかもしれないし、あるときは導くように弾くかもしれないし。そういうことができるようになったのは、ある程度キャリアを積んでからかもしれないな。


僕は絵を描くように音楽を作りたい。


水野:若い頃のご自身の演奏とか、若い頃に作られた作品とか、今どういうふうに見えるんですか?

武部:20代の頃、すっごくアレンジャーとして忙しくてね。いわゆるアイドルポップスをものすごい数やっていたわけ。今考えるとかなり自己満足的だったと思うの。だけど、ずっと一貫しているものがあって。僕は絵を描くように音楽を作りたいと思ったの。

水野:はい。

武部当時は、やたらといろんな絵の具を使って、色彩を詰め込んで、下地を塗って、その上にまた色を塗って、グラデーションをつけてみたいな。そんな作り方で自己満足していたと思うんだけど。今はそんなことをしなくてもいい絵が描けるようになったかなぁって、なんとなく思うんだよね。

水野:前に、対談QでイラストレーターのWALNUTさんと対談したときに、「絵がうまくなっていくと線が少なくなってく」とおっしゃっていて。その話と近いなと思いました。すっと描いてもニュアンスが表現できる。「迷っているときは線が多くなるんです」みたいなことをおっしゃっていて。

武部:そうかもしれないね。

水野:みなさん経験を積まれた方って、シンプルな方向に進まれるようなイメージがあるんですけど。

武部:橋本愛ちゃんの『THE FIRST TAKE』も、一筆書きの強さみたいな。細かいことよりもざっと一筆であの何分間か描いたことがうまくいったケースだと思うんだよね。

水野:あの緊張感と切なさの同居は何なんですかね。


武部
:でも今この時代さ、わりとお客さんもそういうリアルなものを求めている気がする。

水野:はい、はい。

武部:ある時期、ものすごく作り込んで完全武装して、歌も直しまくって。そういうものが時代を引っ張っていったときもあったじゃない。でも今、『THE FIRST TAKE』がそれだけ支持されているのも、アーティストが持っているリアリティとか、音楽の瞬間の輝きをみんな欲しているんじゃないかなと思うんだよね。

水野:歌番組も生演奏増えましたもんね。

武部:そうなんだよね。ここへ来て。一時、カラオケばっかりだったのに。

水野:必ず生演奏にこだわる番組をたくさんやられていらっしゃると思うんですけど。たとえ同じようなテレビ尺でも、生演奏だとそのとき1回しかないものがどうしても出ていきますし。歌う方々のテンションが違いますよね。


「この声で歌ってもらっている」って感覚。


武部:質問なんだけどさ、たとえば水野くんはいきものがかりのなかで、聖恵ちゃんの歌とかパフォーマンスとかを、どういうふうに見て、どう引っ張っているの? 曲とかも全部作っているわけじゃない。その関係ってどういう感じなのかなと思って。

水野:時に応じて変わっていくんですけど…。デビューした頃とか、「一緒に頑張ろうよ」ってスタートしたときとは全然違いますね。ていうのは、幸い多くの方に聴いていただけるようになって、みなさんがもう聖恵の声を知ってくださっているので。

武部:はいはいはい。

水野:こっぱずかしいんですけど、「この声で歌ってもらっている」って感覚。

武部:あぁ~、なるほどなるほど。

水野:いちばんいきものをみなさんに聴いていただけた頃は、2010年ぐらいですかね。聖恵の声が怖くなるような瞬間というか。知られているからこそ、これを傷つけちゃいけないみたいな気持ちはあったりしましたね。

武部:聖恵ちゃんってすごく音楽的反射神経があるひとだなぁと見ていてさ。たとえば、ステージでもテレビ番組でも、その瞬間その場の雰囲気とか、他のひとのやっていることとかをキャッチして。それにうまく乗って、切り替えることができるひとだなぁと思っているんだよね。

水野:メンバーを褒める形になるのでこっぱずかしいんですけど。いい意味で、八方美人でいられるっていうか。ちゃんとひとに愛される才能がすごくあると思うんです。

武部:大事なことだよね。

水野:大事だと思います。だからスタジオの現場でも、リハーサルの現場でも、みなさん聖恵が来るとパッと明るく返してくださったり。そうすると聖恵がバッと返すじゃないですか。そのコミュニケーションをみなさん喜んでくださるので。それは音も集まっていくよなって。

武部:うん。そうだね。

水野:あんなにすごいミュージシャンのみなさんが、この子の歌のためにって演奏してくれるじゃないですか。それってすごく贅沢で、誰にもできることではないというか。アーティストの方ってどこか、このひとのメロディーに、このひとの歌に、って誰かに思わせる魅力を持っているのかなって。

武部:そうだよね。

水野:隣にいて眩しく思えるときがあります。


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