読む『対談Q』 水野良樹×宇野常寛 第3回:お客さん(=読み手、書き手、仲間)は育っていく。
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読む『対談Q』 水野良樹×宇野常寛 第3回:お客さん(=読み手、書き手、仲間)は育っていく。

HIROBA

HIROBAの公式YouTubeチャンネルで公開されている『対談Q』。こちらを未公開トークも含めて、テキスト化した”読む”対談Qです。

今回のゲストは評論家の宇野常寛さん。

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プラットホームからの自立。


水野:場づくりで言うと、YouTubeでいわゆる「~してみた」みたいなネイティブなYouTuberだけじゃなく、芸能の世界からYouTubeに転身して成功を収めている方がたくさんいらっしゃるじゃないですか。既存の大手芸能事務所の枠組みにはまらず、個人の力で利益を得たり、成功をしたり。これ、一面ではすごくいいことなんだけど、新しいことをしたわけじゃなくて、あくまでYouTubeのゲーム上で勝ったってことだと思っていて。

宇野:うん。

水野:個人がそれをやったことは、芸能や音楽の世界にとって大きなことなんですよね。今まではどうしても組織が強かったし、商習慣の縛りも強かったから。そこから抜け出して自立できたことは大きな一歩で、そこに対しては尊敬しかない。だけど次なる一歩は、あるプラットホームで出来あがったルールから距離を取って、プラットホームからも自立して成功できるスタイルを作ることが大事だなって。それをどう作っていけばいいのか難しいですね。

宇野:それは僕もずっとやっていることなんですよね。たとえば『モノノメ』はamazonで売らないことにしていて。選ばれた本屋、もしくは直販でしか買えない。だから、“本屋を選んで、そこに足を運んで本を買うという体験も含めて楽しんでほしい”っていうメッセージなんですよ。プラットホームから逸脱するのは、楽しいことだと、おもしろいことだと、宝探しのような快楽があるんだと、伝えたいと思ってこうしているんです。


『モノノメ』


宇野:その結果、お客さんが育っていくといいと思うんですよね。単に人工知能にレコメンドされているものを、機械が反応するようにひたすらタップしていくのではなく。試行錯誤しながら物事を選ぶこと自体が、面倒くさいかもしれないけど楽しいよと。そういうお客さんも増やしていく。

水野:なるほどなるほど。

宇野:僕らも、「難しいな」とか「絶望しちゃうな」とか思ったりするのは、お客さんが永遠に変わらないという前提に立つからなんですよ。そうじゃなくて、お客さんは賢くなるし、スキルを覚えていくし、思考が変わっていく。それをどれだけ仕掛けていけるかが大事だなと思って、こういう活動をしています。


ひとは読むより書くことが好き。


水野:ここ数年で僕が勝手に、宇野さんが一歩踏み込んだなって思ったのは、『PLANETS』のなかで“発信の仕方”の講座を熱心に取り組まれているんですよね。かなり熱意を込めて次なる発信者や、仲間を見つけていく作業というか。まさにお客さんを育てることに近いのかもしれない。これはどういった目的で始めたんですか?

宇野:僕が『遅いインターネット』っていう運動で、インターネットをもっと遅く使っていこうと。タイムラインのニュースに脊髄反射したり、大喜利的にコミットしたりするんじゃなくて、ちゃんと背景も含めてじっくり調べようと。そう提唱したとき、人々ってやっぱり読むことより書くことのほうが好きなんだなと。どんなにおもしろい他人の話を聞くよりも、すごくつまんない自分の話をするほうが好きなんですよ。

水野:なるほど。

宇野書くことのほうが身近にあって求心力が高いなら、まずそこからアプローチしてひとを変えていかなきゃと思ったんです。君たち、どうせ書きたいんだったら、自分の考えを世に発信するスキルを、僕が培ってきたことを参考に教えるから、ちょっとついてきてくれないか? みたいなことをやってみた。これは試行錯誤で、お客さんを育てるって意識ですよね。

水野:やってみて、実際その講座を受ける方々って変わっていきます?

宇野:そうですね。やっぱりスキルはどんどん上がっているし。自分と世の中との距離感をはかるときに、考えを整理して、それを書いて発表する行為って、すごく役に立つことなんですよね。熱心に講義を受けているひとで、Twitterを乱暴な使い方しているひとはあんまりいないし。内省することに使ってもらっている感じがしますね。そこはやってよかったって思うことです。

問いを立てることが価値のある発信。


水野:僕、5年ぐらい前に、スポーツ雑誌の連載を持ったんですよ。初めて商業雑誌で読まれる文章を書くとなったとき、やっぱり体裁を整えて書かないといけないと思うじゃないですか。

宇野:うんうん。

水野:そこで、構成や言い方を考えていく作業、書くという作業は、自分の思考そのものをより論理的にしていくんだなって、感じたんですね。


宇野いちばん僕が伝えたいのは、問いを立てることなんですよ。タイムラインに流れてきたものに大喜利的に返したり、自分が賢く見えること、マジョリティーの側に立つことに、みんな一生懸命じゃないですか。でもそれってあんまり脳みそを使わない。大事なのは、ここにある事象や物事に対して、どういう疑問を持つのか、自分の問いを立てることが価値のある発信なんですよね。

水野:はいはい。

宇野:この視点があると、そもそも問題それ自体が間違っているんじゃないかということにも気づく。

水野:なるほど。

宇野:たとえば、殺人事件があったときに「こんなひどい殺人を犯したやつは人間のクズだ」って言うのは簡単だけれど、実は彼や彼女が殺人を犯さなきゃいけなかった社会的背景とか、経済システムの問題とか、(再び同じような犯罪が起こらないために)議論するべき点があるかもしれない。そういったところまで目が行くようになるためには、問いを立てる力が必要。その訓練に、書く力が繋がっているんだと思います。

水野:難しいけれど、問いを立てることが、物事や事件と、自分との関係を作る大事なポイントである気がします。

宇野問いを立てないと自分の発信にならないですよね。解決じゃなくて問題設定の力を養いたいと思っていて、ワークショップとかやっているんです。


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