読む『対談Q』 水野良樹×宇野常寛 第4回:問いを立てることはビジョンを持つこと。
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読む『対談Q』 水野良樹×宇野常寛 第4回:問いを立てることはビジョンを持つこと。

HIROBA

HIROBAの公式YouTubeチャンネルで公開されている『対談Q』。こちらを未公開トークも含めて、テキスト化した”読む”対談Qです。

今回のゲストは評論家の宇野常寛さん。

つづきはこちら


「こんなラーメンが食べたい」でもいい。


水野:問いを立てる上で、いちばん最初にするべきはなんですか? 何を心がければいいですか?

宇野問いを立てるということは、今そこに物事があるとき、目指すべきビジョンを持つことなんですよ。

水野:ビジョン。

宇野:たとえば、僕はあるワイドショーに何年か出ていたんですけれど。シングルマザーがネグレクトして子どもを死なせてしまったというニュースがあって。そのとき、やっぱり一斉に、そのお母さんの個人的なプライバシーを暴いて、そのひとがいかに悪い人間だったかと、叩く方向にいくわけです。でもそれは再発防止のためにまったく意味がないと思っていて。

水野:はい。

宇野:ネグレクトされている子どもに、どうやったら地域社会が手を差し伸べる制度が作れるのかとか。そもそも片親に対しての補助が弱いんじゃないかとか。そういったことをもっと論じるべきだと僕は言ったんですね。では、なぜそこで問題設定ができるかっていうと、「ネグレクトで死ぬ子どもを減らす社会がいい」というビジョンがあるからなんです。

水野:なるほど。

宇野:あるべき姿をちゃんと考えると、そこに向けて何が必要なのか問いが立てられるんです。

水野:いったん、どんな理想論でもいいから、自分自身がこんな社会であってほしいとか。

宇野:別に立派な理想像とかじゃなくていいんですよ。こんなラーメンが食べたいでもいいですし。こんな異性や同性と付き合いたいでもいいですし。こんな友だちがほしいでもいいし。なんでもいいんだけど、まずビジョンを作ることによって、初めて問いが生まれるんだと思っています。

水野:逆に、問いを立てることが難しいのは、自分が何を好きかとか、何を理想としているかとか、そういうビジョンをみなさんが見つけられてないのかもしれないですね。

宇野:でもね、極端なこと言うと、そんな大した話じゃないんですよ。だって、ネグレクトされている子どもは、死なないほうがいいに決まっているでしょ。そんな難しい話じゃない。ごくごく自然に考えて、子どもがそんな目にあってしまうことはないほうがいいに決まってる。


発明されたばかりのものは野放しになる。


水野:そこを大事にできるかですよね。「子どもが死んじゃだめだよね」ってことは、みんな自然な感覚として理解できるし、そう思うはず。でも、ネグレクトがニュースになったときに、まず何をするかっていうと、原因となる属人的な理由を追及して叩く。(誰かを叩くことによって)それぞれが持っている社会上での立場を守りたいという緊迫感のほうが、自然な感情に勝っちゃうのが怖い

宇野:それは基礎的な社会観の問題でね。失敗した人間に石を投げるとか、誰かと比べて自分はマシだということで自分を保全するとか、そういう回路を身に着けちゃっていることが問題なんですよ。そこを破壊していかなきゃいけない。それは人間だれしもあると思いますけど、今SNSによって何十倍にもなっている。いちばん簡単に安心する方法がSNSでひとを叩くことになっちゃっているじゃないですか。

水野:なってますね。

宇野:たとえば、車やオートバイが発明されたときって、みんなバンバンスピード違反していて。オートバイにヘルメットの義務付けがされていなかった時代もある。僕らが子どもの頃って交通事故、今の2倍とか3倍ぐらい多かったんですよね。車のシートベルトの着用義務とかも今とは違うし。それとまったく同じで、今そういうタイミングなんですよ。

水野:うんうん。

宇野:発明されたばかりのものって野放しになっちゃう。それは僕らが知恵を身に着けていくべきで。ひとと比べることって、麻薬的な快楽があって自分を見失っちゃうからよくない、みたいなこともどんどん啓蒙していくべきだし。

水野:今がそのタイミングだってことは本当に思いますね。いろんな失敗をされた方が、リカバリーするまでの時間が長すぎる。ひとを茶化したり、貶めたりする材料が上がってしまうと、その利用の賞味期限が長すぎる。

宇野:長すぎるし、ちょっと昔だったら“おもしろいフォルダ”に入ることが、マジ切れ案件になっていますよね。「そこ付き合ってんの? マジで?」って済む話が、「ファンに対しての裏切りだ!」みたいな。

水野:ははは。

宇野:別に家族でもなければ、仕事仲間でもない人間が石を投げて攻撃するじゃないですか。あれは快楽の問題だと思うんですよね。それがローコストかつ短時間でできるようになってしまったことによって、爆発的に普及している状態。

水野:大本に戻ると、僕はその社会が嫌だから。その価値観が変わっていくような運動をしていきたいですね。


息苦しくない世界は気持ちがいいんだ。


宇野だから、「こうしなきゃいけない」と言うことも大事だけれど、おもしろさで戦わなきゃいけないんですよね。

水野:なるほど。

宇野:短期的には快楽をそんなに得られないかもしれないけど、こっちのほうが長期的には絶対におもしろいんだと。さらには、自分にとって成長させてくれるひとや、生き生きとしたひとに出会えるんだと。ちゃんと「こっちの水が甘いぞ」ってやっていかないと、負けていくと思います。

水野:一方で、10代後半から20代前半の子たちに会うと、よく思うんですけど、めちゃくちゃみんな“いい子”なの。この“いい子”は皮肉を込めて言っていて。

宇野:ああ。

水野:つまりは、SNS上での炎上とかに対して、非常に敏感なセンサーを持っている。どこが倫理的な違反のラインになるのか、僕らよりもすごく高い感度を持っている。だからみんないい子。彼らはネイティブにそうなっているはずなんだけど、基本的に息苦しいと思うんですよね。

宇野:息苦しくない世界は気持ちがいいんだって、僕らが見せていけなきゃいけないんだと思いますよ。

水野:だから彼らとも連動したほうがいいと思います。彼らはもちろん叩き合うものをいいとは思ってないはず。だけど、それを上の世代が押し付ける形とかに絶対になっちゃいけないし。

宇野:なっちゃいけない。だから僕らが生き生きと楽しそうなことをやって、おもしろいコンテンツをいっぱい出していくことがいちばん説得力のあることだと思うし、建設的な批判であると思うんですよ。

水野:そうですね。だから、宇野さんが常におっしゃっている、否定ではなく肯定でスタートするコンテンツを。

宇野:何かよくないと思ったときに、より魅力的な対案をぶつけるとかね。たとえばご存じのオリンピック。本当に筋金入りの誘致団体からの反対派なんだけど、「オリンピックやめろ」ってデモすることはまったくなかったんですよ。そうじゃなくて、「もっとこういうオリンピックにしたほうが建設的でおもしろいし、国際社会に対してポジティブな提案になるよ」ってことをずっと言ってきたんですよね。

水野:当時出された『オルタナティブ・オリンピック』の案は、みなさんもう一度読んだ方がいいと思います。やっと時代が追いついてきたとかよく言われていますけど。もう一度みなさん、とくにエンタメ業界にいらっしゃる方、是非とも読んでみてください。

宇野:Webでね、結構今無料公開しているところがあるので。

水野:当時、僕らいきもののライブ制作とかにも渡しましたもん。「すごいヒントありますよ」って。皆さん、おもしろがって読んでいました。そんなふうにですね、僕は宇野さんの活動を希望に感じながらやっていますので。同志というにはおこがましいですけれども。

宇野:いや、同志だと思っていますよ。

水野:その背中を見ながら、みんな頑張っています。これをご覧のみなさま。もちろんご自身で発信されるのもそうですし、そういう活動をされている方を応援されるのも、ひとつの運動ですので。みなさまもぜひ楽しんで、ご覧いただいたり、書いていただいたらいいんじゃないかなと思います。今日の対談Qのゲストは宇野常寛でした。ありがとうございました。

宇野:ありがとうございました。



宇野常寛さんが編集長を務める雑誌『モノノメ #2 』は「身体」特集。
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