読む『対談Q』 水野良樹×宇野常寛 第1回:論破ゲームが好きなひとから距離を置く。
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読む『対談Q』 水野良樹×宇野常寛 第1回:論破ゲームが好きなひとから距離を置く。

HIROBA

HIROBAの公式YouTubeチャンネルで公開されている『対談Q』。こちらを未公開トークも含めて、テキスト化した”読む”対談Qです。

今回のゲストは評論家の宇野常寛さん。


ひとを選ぶとき大事な基準。


水野:さぁ、対談Qです。今日のゲストは評論家の宇野常寛さんです。よろしくお願いします。

宇野:よろしくお願いします。


宇野常寛(うの つねひろ)
評論家。1978年生まれ。批評誌<PLANETS>編集長。
著書に『ゼロ年代の想像力』(早川書房)、『リトル・ピープルの時代』(幻冬舎)、『日本文化の論点』(筑摩書房)、『母性のディストピア』(集英社)、『若い読者のためのサブカルチャー論講義録』(朝日新聞出版)。石破茂との対談『こんな日本をつくりたい』(太田出版)、『静かなる革命へのブループリント この国の未来をつくる7つの対話』(河出書房新社)など多數。立教大学社会学部兼任講師も務める。

水野:今日は先ほどまで別の収録をしていました。宇野さんがやられている『遅いインターネットラジオ』に出演させて頂いて。その収録場所であるPARK by CAMPFIREからお送りしています。もうだいぶお話させていただいて。

宇野:ありがとうございます。長話させてすみません。

水野:いえいえ、フランクな話もしたし、社会情勢に関わるようなシリアスな話もしたし、すごく楽しくて、その延長戦みたいな感じですね。

宇野:そうですね。

水野:そのままHIROBAの『対談Q』にも出ていただきました。こちらも一応テーマを考えまして「つながりすぎた現代で、楽しい“場”はつくれるのか?」

宇野:はい。

水野:HIROBAという活動をしていますが、これは正直ですね、ぶっちゃけて言っちゃうと、宇野さんにかなり影響を受けてやったようなところがあります。宇野さんは編集ユニット『PLANETS』を運営されていて、なかでも『遅いインターネット』という活動をされていまして。

水野:SNS上でのタイムラインの潮目であるとか、世間の物事の流れに影響を受けるのではなくて、自分たちで丁寧に場を作ったり、記事を作ったり、たくさんやられていて。僕はそこに影響を受けてきました。今日は宇野さんがどのように『PLANETS』や、あるいは『遅いインターネット』をやられているのかみたいなことも伺いたいなと思っています。

宇野:ええ。よろしくお願いします。

水野:宇野さんはゲストを迎えるときって、どのようなスタンスでいつもいるんですか?ご自身の考えと違う方もいらっしゃると思うんですけれど。

宇野僕はもう単純に「そのひとの話を聞きたい」と思うかどうかなんですよ。自分のなかで関心があることがあって、そのひとはたぶん、僕よりもその問題について詳しいだろう。もしくは知識量は変わらないかもしれないけれど、僕と違った現場を経験しているので、異なった意見や視点があるだろうと思ったひとを呼ぶ。そこで話を聞いて、自分の考えの参考にしているんですね。

水野:なるほど。

宇野:僕は自分でも本を書いていますが、一方で、雑誌を編集したりとか、小さい出版社を作って他の著者の本も作ったりしているんです。僕じゃないひとの本も。それは自分で読みたいものを自分で作るっていうスタンスなんですよね。

水野:ご自身の興味からスタートされることが多いんですね。

宇野:完全にそうですね。それ以外まったく考えてないです。

水野:たまにトークベントを拝見するんですけれど、結構シリアスな話題もあるじゃないですか。政治的な事柄は当然シリアスになる。激論になる場合もあると思うんですけど、あれが成立するってどういうことなんだろうなって。どういうところを大事にされているのかなって。

宇野:僕は最近ね、ひとを選ぶ基準ってすごく明確化していて。これ最近、僕が作った『モノノメ』っていう雑誌なんですけれど。

『モノノメ』


宇野:この秋に新しく雑誌を作って、どんなひとを出そうかって思ったときに、いちばん大事にした基準が「ひとを貶めて自分を賢く見せようと思わないひと」にしようと思ったんですよ。

水野:ああ、それはずっと宇野さん、言い続けていますよね。

宇野:やはり今、いろんなひとがSNSのアカウントを持っていて、少しでも自分の影響力を高めようとして、フォロワーやいいねの数を増やそうとしているじゃないですか。そうすると、いちばん手っ取り早いのは誰かの揚げ足を取って自分の株を上げることだったりするんです。みんなが叩いているひとに自分も石を投げて、自分はマジョリティーの側ですよ、まともな側ですよってことを証明することがいちばん手っ取り早い。

水野:ああ、悲しいですね。

宇野:でもそれって、要は、ある問題が目の前にあったときに「問題を解決する方法を考える」とか「問いそのものの妥当性を問う」とかでもなく、単に「こう答えるとウケる」っていう基準でしか行動しないってことを意味するんですよね。そういったひとは何百人呼んだって意味がない。ゲストに来てもらっても全然参考にならないなと思って。そういったひとを全部切ったんですよ。


タイムラインの大喜利はくだらない。


水野:宇野さんの普段の発信を見ていると「否定から始まるひと」に対しては、すごく距離を取りますよね。誰かの否定だったり、何かの考えの否定から始まるのではなく、提案であったりとか、問いそのものに対してちゃんと集中するひとっていうのを探していらっしゃるっていうのはよくわかります。やっぱり最初の否定を排除するだけでも、”場”づくりのためには大きいのかな。

宇野:大きいと思いますよ。そのことによって、問題そのものについて議論できるんですよ。「こう言うと自分が賢く見える」と考えるひとが場にひとりいるだけで、もう別のゲームが始まっちゃうんですよね。

水野:陣取りゲームというか。

宇野:いかに相手の失敗を突いて自分を賢く見せるかっていうゲームになってしまって。実際に起きている問題を解決するにはどうしたらいいかっていう知恵の出し合いにならなくなるんですよ。でもね、僕は後者の方がおもしろいと思うし、長期的に残っていくと思う。だから、そっちに力を入れたいなと思って、いわゆる論破ゲームみたいなものが好きなひとからは距離を置いているんですよね。

水野:一方で、現実的な問題として、論破ゲームというか、SNS上での人気競争みたいなものが、やはり麻薬的な誘引力を持っていると思うんですよ。そちらにひとは集まってしまいがち。僕も後者の側にいたいんだけれども、それって誘引力がなくて、淘汰されてしまいがちで、どうしたらいいのかなと。

宇野水野さんそれはね、僕らがガチでやるしかないんですよ。

水野:ああ、そうか。

宇野:つまり、僕らが本当に覚悟を決めて、時には連帯して、ああいったSNSの相互評価のゲームはくだらないんだと。タイムラインの大喜利はくだらないんだと。論破ゲームなんてやっても全然問題は解決しないんだ、本当に大事な問いは見つからないんだということをちゃんと言っていくってことだと思う

水野:そうですよね、覚悟。

宇野:そういうSNSの相互評価のゲームで、麻薬的な快楽に溺れてハマっちゃっているやつはカッコ悪いっていうコンセンサスを作るしかないと思うんですよ。これは2~3年ではできないと思っていて。でも僕は10年20年かけたらできると思っているんです。

水野:10年ですか。

宇野:よく僕が使う例えなんですが、水野さんの年齢って僕のちょっと下ですよね。

水野:はい、いくつか82年生まれです。

宇野: 80年代って、ちょっと汚い話だけれど、おっちゃんとかが当たり前に立小便とかしているんですよね。でもね、さすがに2020年代の今はほとんどしてないと思うんです。日本人の公衆衛生の意識って、とても向上している。この30年ぐらいで。

水野:よくわかります。自分の子どもの頃を考えれば。

宇野:だから30年でおっちゃんが立ちションしなくなるんだったらね、10年20年かけて、ネット上での相互評価のゲームを目的にしてしまって、問題そのものにアプローチできないような薄っぺらい奴はバカであるっていうコンセンサス、僕は作れると思うんです。それを作るしかないと思っています。

水野:なるほど。長い旅な気がするけど、でも光はある気がします。そうあってほしい。SNS上での論破ゲームとか、人気取りゲームみたいなものが定着してしまったのも、どれくらいの時間でなったかといえば、ここ10年ぐらいだと思うし。

宇野:そうなんですよ。SNSの大衆化は日本で言うとTwitterの普及なので。そう考えれば、10年でこうなったことを、5年、10年でひっくり返すってそんなに難しいことじゃないはずなんです。

水野:そこに対する需要もあるはずですよね。ネットに疲れているひとたちがみんなSNSから退避しているじゃないですか。

宇野:退避してるし、たとえば生々しい話をしますけど。水野さん今、独立してますよね。だから中小企業の経営者みたいなものですよね。

水野:そうですね。名ばかりですけれど。

宇野:じゃあ自分のHIROBAの新しい編集スタッフを雇おうと思ったときに、Twitterでしゃしゃっているひとを採用します? しないんじゃないですか?

水野:しないと思う(笑)いや、絶対しない。

宇野:絶対しないでしょ? 僕もしないもん。だから、実は結構変わり始めてるんですよ。

水野:そうか、始まってるんだ…。価値シフトが…。


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