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これはあなたの物語だ 2020年、東京

2020.01.01

いよいよ幕を開けた2020年。東京オリンピック・パラリンピックという大きな節目を迎えるいま、水野良樹が新たな時代への思いをつづった詩「これはあなたの物語だ 2020年、東京」をお届けします。※こちらの詩は2020年1月1日発行の日刊スポーツ1面に掲載されたものです。

これはあなたの物語だ
2020年、東京

“時代は変わる”
遠くから聴こえてきたその声に
あなたは立ち止まって
困った顔をして、力なく笑って、そして首を振る

変わらない、いや、変えられない

光り輝くスタジアム
眩しさのなかで、走り、飛び、舞う、いくつもの背中
熱狂と落胆とが、渦となって、うねる

あなたは、それを見て、何を思うのか

56年前の東京にも
“時代は変わる”と言ったひとたちがいた

戦争で焦土と化した我が街を前にして
失われた命の残り香を、すぐとなりに感じながら
叶わない夢を見たひとたちがいた

物に富み、豊かになって、空を、陸を、自由に行き交う
それらが絵空事にしか思えない暮らしのなかに身をおいて
叶わない夢を見たひとたちがいた

やがて
いくつかの夢は叶った
いくつかの夢は叶わなかった
すべては過去になって、もう、むかし話だ

あなたは
今、ここにいる

2020年、東京

今には今の、現実がある

顔を上げる
スタジアムはまだ、輝いている
歓声が聴こえる

夢も、希望も、すべてはきれいごとだ

スタジアムの外には、おびただしい数の敗者がいる
祭典の喧騒のなかで、かき消される声がある
今日も涙しているひとがいて、今日も誰かが責められている

この世界には、悔しさと、怒りと、あきらめとが、つみかさなっている

でもその現実の前で
あなたは生きていかなくてはならない

風が吹いている
56年前とはちがう風が、ここに吹いている

ひとは、強くはないが、弱くもない

かつての風のなかでも
絶望と呼んでいい現実のうえに
夢や、希望という、きれいごとを
生み出そうとしたひとたちがいた

すべてがうまくはいかなかった
だが、何度、現実に打ちのめされようとも
誰かが、きれいごとをつないできた

だからこそ、ひとは、今日を迎えている

つながれてきたそのすべてを
“時代”と呼びながら
その先に、あなたも、僕も、立っている

順番は
まわってきている

いつか今日も、思い出されるのだろう
2020年、東京

聖火台に燃える火に、あなたは何をみるのか
躍動する選手たちの背中に、あなたは何をみるのか
声をあげ、手を振る、観客たちの姿に、あなたは何をみるのか
そのすべてをつつむ風のなかで

あなたは何を思うのか

希望を見出せるだろうか
つなげられるだろうか

それとも

これはあなたの物語だ

問いかけてみてほしい

あなたもまた
はじまりの前に立っている

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