読む『対談Q』崎山蒼志さん(シンガーソングライター)後編①
見出し画像

読む『対談Q』崎山蒼志さん(シンガーソングライター)後編①

HIROBA


作曲においての自分の「声」について

水野:曲を作っているときって、自分の声ってどれくらい想像しているものなんですか?

崎山:結構、想像していますね。やっぱり自分の声が歌っているイメージで曲を書いていますね。

水野:そこが自分とはすごく違うんですよ。僕は自分で歌うってことが基本ないから。グループでも吉岡が歌うし。提供曲でも違うシンガーが歌う。あんまり声を意識せず、フラットな状態でいることが多くて。歌えないってことはあるんですか? 作っているときはイメージできたけど…

崎山:あります、あります。自分でイメージしていても、全然うまくいかないときもありますね。「うわ、高…」みたいな。活舌が回らないとか。だからラッパーのひととかもすごいなぁと思います。

水野:曲を作るときは、詞とメロディーはどういう順番で作っていくんですか?

崎山:ギターを弾いていて、印象的だなとか素敵だなとか思うところがあったら、そこからなんとなく歌詞を書きつつ、広げていくって感じですね。それか(歌詞もメロディも)どっちも一緒に作っていくか。

水野:歌詞を書くときは何が見えているんですか?

崎山:想像上の景色とか。自分が幼い頃とか、最近に見た風景…感じたこととかも歌詞に書いていきます。見えたものが多いですね。あと聞こえたこととか。感覚的な感じ…フィーリングというか。

水野:記憶の断片が自分のなかで混ざって、パッと出てくる。「風来」って曲で、歌詞のなかに<鉄塔>って言葉が出てくるんだけど。

崎山:はい、出てきますね。

水野:崎山さんの声で聴くと実に自然に聴こえるんだけど、よくよく考えると<鉄塔>って使うか?って。歌にするか?みたいな(笑)。だけど「地元に鉄塔が多くて」とか、おっしゃって。そういうのが写真的なのかも。

崎山:かもしれないですね。自分のなかに<鉄塔>があるというか。それを歌っていたりしますね。映像的な部分は大きいです。あと感覚的な、現代詩じゃないですけど。そういう感覚から影響を受けたり。

水野:もちろんメロディーも素晴らしいんだけど、詞だけ読んでもおもしろいというか。

崎山:わりと詞を書くのは好きです。

水野:詞のほうがスッといける?

崎山:どっちものときもあります。

水野:僕、自分の曲で詞から書いたことないんですよ。誰かから詞をいただいての詞先はあるけれど。詞からだと、どうやって書いていいかわからなくなっちゃいますね。メロディーはある程度イメージしているんですか? 詞先の場合は。

崎山:そうですね。でも逆に曲の振れ幅がなくなっちゃう気もします。頻繁に転調したりできなかったり。だから最近は一緒に作ることが多いですね。考えながら進めることが多くなりました。

水野:あんまり言葉とメロディーが、頭のなかでは分けられていないんでしょうね。もうちょっと結びつきが強くて、一緒に混ざっている。

崎山:サビとかはとくにそうですね。

水野:いちばん調子いいときはたしかに一緒に出てきますもんね。自分の場合で言えば<帰りたくなったよ>とかは<帰りたくなったよ>以外にないというか(笑)

崎山:ああ、そうなんですね。あの曲は一緒だったんですね。

水野:そういうときってやっぱり確信めいたものがあるから。

崎山:「これなんかちがうな…やめようかな」って思っても、でもやっぱり「これじゃなきゃダメだ」って戻るものも結構ありますね。

水野:わかります、わかります。

水野:曲をボツにすることはあります?

崎山:いっぱいあります。

水野:本当ですか。じゃあ出てない曲もある?

崎山:あります、あります。考えすぎちゃって。歌詞とか、小説的な描写が僕も好きなのでそうやって書いていって、書き終えたときに「これ、何を言っているんだろう」って思うものは結構多くて。書いていることが曖昧すぎちゃうとボツにしたり。曲にも起伏がなくなってくるので。

水野:小説的なものと、歌的なもの。そのあいだに何か溝があるんですかね。これは歌にはなってないな、みたいな。

崎山:あると思います。でも例えば今回の「透明稼業」は、最果さんは小説から詞を書かれているから、本当にすごいなと思いました。すごい素敵です。

水野:最果さんは、Little Glee Monsterの「夏になって歌え」って曲で一回ご一緒しているんですけど。そのときは結構、歌の形に整えた詞を送ってくださったんですね。今回は不定形な感じの詞で。実際、最初にデモを聴いたときとかどう思われました?

崎山:めっちゃ良いと思いました。安直に「良い」とか言っちゃったんですけど。水野さんが歌われているのが、すごく僕は個人的に好きで。なので「え、これも音源として僕は欲しい」って。僕が歌っていいのか?って思っちゃうぐらい素敵でしたね。長谷川さんのアレンジもついて。

水野:長谷川さんのアレンジすごかったね。あれすごいのよ。衝撃でしょう?(笑)

崎山:すごかったです。

水野:俺ここ(作業部屋)でデモを初めて聴いたんだけど。なんなんでしょう、これ、みたいな。

崎山:長谷川さんのファンでもあるので「うわぁー嬉しい―!」みたいな。

水野:動物の鳴き声や、赤ん坊の声みたいなものがサンプリングされて、それがシーケンスになってリズムになっている。そのサウンドのなかで歌うって、どういう感じ?

崎山:楽しかったですね。すごく刺激的でした。揺れている感じも面白いですし。長谷川さんも熱があるというか。身体的な感じがして。ひとつ例えるならば、海の動きのような。

水野:そうだね、たゆたっているというか。なのに、ちょっと無機質じゃないですか。

崎山:ああ、そうですね。最後のボーカロイド…<ずっと>っていうところ。おぉ…って。

水野:すごすぎて、声が漏れちゃう感じね(笑)。

水野:どうやったらこう…なじめるんですかね。良い声を目指していくじゃないですか。でも声だけに注目していると、間違ってしまいそうな気もする。

崎山:ああ、そうかもしれないですね。

水野:崎山さんの弾き語りが素晴らしいのって、ギターの演奏リズムと崎山さんの声のリズムが、不思議なグルーヴをつくってて。だからこそ、その特徴的な声も活かされている気もするし。

崎山:それぞれの音楽に合った声の良さみたいなものがありますよね。シンクロしているとか。

水野:自分のライブでうまく歌えたなって思うときって、どういうときなんですか?

崎山静かめに歌うときに、遠くに投げかけるように、やまびこみたいに歌えたら。パーンって声が伸びると嬉しいですね。静かな流れなのに、声が抜けると気持ちいいです。でも、それは張っている声じゃなくて。

水野:めちゃくちゃ難しいことじゃないですか。矛盾していますもんね。静かな声なんだけれど、通るって。

崎山:そうですね。“静かな心意気”なんですけど。

水野:“静かな心意気”。

崎山:この前、ライブでピアノとアコースティックギターだけでやった曲があるんですけど。静かな曲で、だんだんと抒情的になっていく。静かに歌っていて、声を出す瞬間に盛り上がってくるときとか、すごく楽しくて。

水野:やっぱり滑らかなものを目指しているんですね。無理がないけれど、グッと強くなったり。

崎山自分の声がひらきすぎると、なんか…食虫植物が開ききったみたいな映像が浮かんじゃうというか。逆にシャウトぐらい振り切れば、問題ないと思うんですけど。

水野:すごいな。普通、自分の声を表現するときに食虫植物がひらいているって思う?(笑)。

崎山:はは(笑)裂けているような感じっていうか。

水野:それも映像のイメージが浮かんでいるんですね。自分の声もある種、具現化しているというか。

崎山:あ…って自分で思っちゃう、そこにギリギリいかないぐらいのところも嫌いじゃないですね。引っ掛かる感じも好きです。でも行き過ぎたら、ダメな気がして。

水野:贅沢やなぁ…。

崎山:塩梅が難しくて。

水野:矛盾することをたくさんやっているんでしょうね。“開きすぎる”ってどういうことかって考えると、それって緊張感がないってことですよね。迷いが無さすぎるというか。

崎山ああ、迷いが無さすぎるのも良くないですね。締めるのも良くないですけど。

水野:崎山さんの声には程よい緊張感があるから。それが聴き手を惹きつける、見ていたくなる感じがある。それが、わかりやすくパカッって開いた歌だと「あ、そういうものだよね」って通り過ぎちゃう。絶妙に「壊れそう…」って思わせる緊張感が、魅力に繋がっているのかなって思って。

崎山:ありがとうございます。自分で好きな部分でもあります。

水野:直感的に気づいているんでしょうね。自分の良さとか、大事なところとか。

崎山:だけど、それも行き過ぎると、聴きにくさに繋がるのかなって。

水野:本当に難しいね、塩梅が。

崎山:あとピッチがすごく取れるってわけでもないので。やりすぎちゃうと、揺れが。

水野:ピッチの話はね、答えがないですよね。ピッチをがっちり合わせたほうが、良く聴こえるタイプのひとと、そうじゃないひともいて。崎山さんは揺れ自体が魅力だから。一辺倒にしちゃったらおかしいし。

崎山:声のピッチをちょっと合わせたいなと思って、合わせようとしたら、声の波形の前の方は合っているんだけど、後ろの方は合っていなかったり。音がなんか…こうなっていて。

水野:わかる!

崎山:「合ってるけどねー」って言われるんだけど、合っているように聴こえない。その逆もあったり。一音なのにすごく揺れていて。

水野:今すごく細かい話をしているんですけど(笑)

崎山:はは、そうですね。

水野:「あー」って発音したとき、人間の声って揺れているから。とくに崎山さんの声は他のひとよりも個性的な揺れをされているので。正しいピッチの線があるとしたら、この間を音が行ったり来たりするんですね。そうするとココを合わせても、ココが合わなくなったり。一音の波形のお団子のなかで…って何の話しているんでしょう(笑)。

崎山:難しい(笑)

水野:ピッチを合わせれば良いって話でもないんですよね。ピッチを直すっていうのはなかなか奥深いですよ。だけどたしかに、厳密には外れているけど、外れているのが良いんだみたいなこともすごいあるから。いや難しい。

崎山:難しいですね。外れていても伝わるものもあったりしますもんね。自分以外のミュージシャンの歌でも、外れているとまでは思わないですけど、そういうのは感じます。

水野:崎山さんの場合はやっぱり、文脈が大事だもんな。一音一音っていうよりは、フレージングの文脈で聴かせる。さっきの滑らかさに繋がっていくけど、ひとつのフレーズのなかで最初から最後までが連動している。ちょっと語り的なところもあるのかなって。

後編②につづく…









この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
HIROBA
ソングライター水野良樹が主宰するHIROBAの公式noteです。 『考えること、つながること、つくること』 その3つを豊かに楽しむための広場=HIROBAをつくっていく試みです。 定期購読マガジン『HIROBA公式マガジン』のご購読もよろしくお願いします。