読む『対談Q』吉田尚記さん(アナウンサー)「”自分という他者”に満足できるか?」後編②
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読む『対談Q』吉田尚記さん(アナウンサー)「”自分という他者”に満足できるか?」後編②

HIROBA

HIROBAの公式YouTubeチャンネルで公開されている『対談Q』。こちらを未公開トークも含めて、テキスト化した”読む”対談Qです。

今回のゲストはアナウンサーの吉田尚記さん。

前回はこちら↓


他者がいない世界であれば、言語も知識も必要ない


水野
:情報収集の話。なんで知識を集めるのかとか、なぜ言語を使って知識を発出するのか。

吉田:はい。

水野:これって、やはり他者がいない世界であれば、必要ないんですよね。

吉田:どういうこと?

水野僕と吉田さんが考えていることが同一で、すべてわかりきっている。仮にそんな究極の状態を用意したら、もう会話が必要ないじゃないですか。僕が持っている記憶、知識、吉田さんが持っている記憶、知識が全部一致していて、相互理解が完全に達成できている。他者の区別もない。そうなったら、情報を行き渡しする必要がないじゃないですか。

吉田:人間の無印良品みたいじゃない?

 

伊藤計劃  /ハーモニー
※完全調和するディストピアが描かれる

水野:ははは。僕らが動物と明らかに差をつけてしまったのは、ある統合した存在を想定して、それに名前をつけて、知識としてポンと概念を外に出して、これを受け渡せるようにしたんですよね。「これが机だね」ということを理解し合える状態を、たくさん作ったから喋れていたり、知識の交換をできていると思うんです。

吉田:はいはい。

水野:でも、他者を想定してないと、これは起こらないと思うんですよ。だから、情報収集したいっていうひとは、やはり根底には他者と分かり合いたいとか、他者にわかってほしいとかっていうものを持っているんじゃないかなって

吉田:わかってほしいと思っているんだけど、わかってもらえなくても別に何も気にしない。

水野:あぁ、そうなんですね(笑)

吉田:わかってくれるひとがいたら、すげー嬉しいと思うけど、わかってもらえないのは当たり前だし。で?っていう。

水野:受け渡しはしたくないですか?自分が死んじゃうじゃないですか、いつか。今この吉田さんに集まった情報や知識が、死ぬ瞬間がやってきたときに、バタッって切れるわけじゃないですか。図書館が一個なくなるようなもので。そこに寂しさを感じたりはしないんですか?

吉田:…ごはん食べて、なくなったら寂しい、っていう感性です、多分。なくはないけど。それを言ったらね、食えないでしょ、みたいな。

水野:ああ。

”ふたり”では生きる価値がある?


吉田
:私は見田宗介さんっていう社会学者にめちゃくちゃ影響を受けていて。人生でいちばん影響を受けた思想家のひとりだと思うんです。その見田さんがある本に書いていたのは、いろいろ思考実験をしてみた結果、人間というのはひとりでは生きる価値がないが、ふたりでは生きる価値があるという結論に達したと。

水野:へぇー。

吉田:それで御徒町凧って会ったことある?彼にもすごく影響を受けて、すごい詩人だと思っているんだけど、彼にその話をしたんですよ。

水野:ご挨拶はしたことあります。

吉田:そうしたら「いや、俺は別にひとりでも生きている価値があるけど」って。

水野:ははは。

吉田:「自分で言葉を書いて、自分で納得がいくかいかないかってあるし」って話をしていて。詩人やなぁって思うのですが。

水野:なるほどね。

吉田;わかってはもらいたいが、わかってもらう必要もないし、嘆く必要もないんじゃない?

「自分という他者」に満足できるか


水野:そういうパターンのひといるじゃないですか。他者の評価をあまり意に介さないというか。ご自身がやられていることで自立できる方。僕は多分そのタイプじゃないと思うんですけど。僕ね、そういう方々って「自分という他者」に対して、満足しているんだと思うんですよね。

吉田:「自分という他者」ね。

水野:「自分という他者」に対して、興味を持ち続けられている。いちばん近い他者って自分だと思うんですよ。で、その「自分という他者」に対して好奇心や興味を持ち続けられるひとは、自分に満足できる、自分として生きていける。だけど何か不安を抱えていたり、不満足を抱えていたり、理想的なものを描く欲求が出てきてしまうひとは、やはり自分より遠い他者を探していくんじゃないかなって思うんですよね。

 水野:多分、僕は後者のタイプだと思います。吉田さんはご自身のなかにある他者に対して、すごくおもしろがれるようになってきたというか。その意味での不安とか、寂しさがどこか軽減されているんじゃないかなって。

吉田うん、全然寂しくないです。全然寂しくもないし、不安でもないし

水野:すごいわぁ。僕はずっと寂しい。

吉田:寂しいかぁ。寂しいけど、存分に楽しいところがあるとスパイスよね。存分に楽しいことが多いと、たまにはひとりにしてよみたいな。自分のために言葉を書いたりとかはしない?

水野:まぁどこか自分のためなんでしょうね。それはずっとそうですよ。書いている瞬間って、ずっとそうだと思う。書くという行為そのものは多分、自分のためだと思うので、自分を保つものなんですよね。

吉田:保つ?

水野:保つ。意味がわからないこと言いますけど、拡散していくじゃないですか。自分の意識って。

吉田:うん、俺もう拡散に拡散を重ねて、ほとんど霧のような状態ですよ(笑)

水野:それを現在というものに集中させるには、やっぱり、ものを書くという行為、何かを作り出すという運動そのものが自分自身なんだというか。僕は書いたという運動によって、何かを得ている、自分自身をかたちづくっているという感覚は最近すごく持っていますね。

木村敏/時間と自己

吉田:『この世界の片隅に』を作った、片渕須直監督にインタビューしたときに、作品が素晴らしかったので「本当に感動しました」みたいなことを伝えたんだけど。「それはあなたがすごいんです」って普通に返すからね。本当にすごいひとだなって改めて。

水野:いやぁ…ちょっとこれ何本にまとめられるかわからないし、どんなふうにまとまるのか、わからないんですけど、結論がないまま今日は終わりたいと思います。もうだって1時間喋りっぱよ。

吉田:でも何度も言うけど、僕はわかってもらおうとは思っていませんよ。

水野:でも何度も観てみてください。そして興味が沸いたら、いろんな本だとか、ヒントになるようなお名前とかたくさん出てきていると思うので、また楽しめると思います。

吉田:いきましょうよ、もうちょいいきましょうよ。私は良いけど、問題なのは観ているひと。

水野:だってスタッフがついていってない。全然、呆れているもん。

吉田:いいんですよ、僕。ごめんなさいね。

吉田:わかるなんて無理ですから。僕も何もわからないですから。

水野:僕らがわかってないですから。

水野:吉田さん、定期的にこの無茶苦茶に喋る会っていうのやりませんか。

吉田:ニーズが世の中にあるのかは知りませんけど。勝手にやる分にはいいんじゃないですか。

水野:配信とかで2時間とにかく無茶苦茶に喋る。

吉田:やるやるやる。いつでもやる。

水野:ゲストは決まりました。


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