読む『対談Q』 水野良樹×高橋久美子 第4回:人間のものではない巡りのなか。
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読む『対談Q』 水野良樹×高橋久美子 第4回:人間のものではない巡りのなか。

HIROBA

HIROBAの公式YouTubeチャンネルで公開されている『対談Q』。こちらを未公開トークも含めて、テキスト化した”読む”対談Qです。

今回のゲストは作家・作詞家の高橋久美子さん。

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私、切れ目ないのかもしれん。


高橋:年を経ていくごとに、自分の生まれた場所とか原点が、いつまでもあるものではないんだって思う。さっきの、おばあちゃんの話もそうだと思うんだけど、積み重なってそこにあるわけで。そこに縛られたくないから、「こんな村おら嫌だ!」って、東京に出てきた感もあるんですよ。だけど、不思議ですね。年を経るというのは。

水野:ルーツとなっている場所に惹かれるのはなぜでしょうね。20代のときとは違った価値が見える。

高橋:いろんな立場のひとの思いが見えてくるからなんだろうね。父や母や祖父や祖母、そしてそのひとたちを取り巻く周りで生きてきたひとたち。広い視野を持てるようになってきて、また違った故郷が見えてきているのかもしれないね。

水野:古い友人みたいな感じだね。もう1回出会う、みたいなところあるじゃないですか。

高橋:なるほど。うまいねー。

水野:「あいつ嫌だな」って思っていたけど、まわりめぐると、「その嫌なところも含めて、魅力だったんだな」って思う。まぁ経験を積まないとわからないし。

高橋:「あいつの悪口を言っていいのは俺だけ」みたいなところあるよね。

水野:山下なんかそうだからね、俺にとっては(笑)

高橋:そうかそうか。私たちの背骨のひとつなんでしょうね。

水野:コロナ禍は、そういうところも浮き彫りにする時間だったのかもしれないですね。

高橋:そうなのよね。大変なことも多かったから、「止まってよかった」とは言わない。だけど、自分のなかに閉じこもったからわかったこともあるね。忙殺されたり、忙しかったりして見えてなかったことが、みんな見えたんじゃないかな。

水野:もう、お茶でも淹れますか?みたいな空気になってきた(笑)。やっぱり年齢を経ているんだなぁ。もうすぐ40ですよ、僕ら。

高橋:それよ。40前感ある?

水野:もうね、そこを通り越しちゃったから。40になっているつもりでいちゃう。

高橋:一緒!もうずっと「あとちょっとで40」って思っているから、41ぐらいの感じ。

水野:実際40になるときにはサラッといくと思うんだよね。

高橋:ずっと構えているからな。28ぐらいから、「もうすぐ30や」って思っていたときと同じかもしれない。だから40歳アニバーサリーとかする気はまったくないよね。

水野:まったくないね。

高橋:地続きやから。2021年の日常やけど、ずっと続いているよな。だから2021年の抱負もとくになかった気がするし。そう考えたら私、切れ目ないのかもしれん。

水野:そう、切れ目ないんだよ。

高橋:淡々としとる。地球やな。ぐるぐるまわっている感じ。公転しながら自転してる。


10年20年の樹木のスパン。


水野:あえて聞くけど、50の自分ってイメージできます?

高橋:みかん農家をしていてね。どんどん枯れていってるから、新しいみかんの木を植えようと思うんやけど、これにいっぱい実がつく頃、私は50歳ぐらいやなぁ…とか。樹木のスパンで考えると、「うわー、短い人生―」って思ったよ。

高橋:だからもう60歳のことを考えてる。あと10年後、この木が全部枯れたときに、次の代を育てとかなあかんから、今植えな、とか。

水野:考えている時間のスパンが全然違うね。だから2~3か月後にリリースですとか言わないほうがいいよね(笑)。「逆算してこれぐらいの締め切りで」みたいな話ばっかりしてる。

高橋:そうなんよな。私も東京に来てからはずっとそういう生活をしてた。でも農業をはじめて、「うわぁ、巡りがデカいわぁ」ってなった。今のみかんの木はおじいちゃんが植えたやつやから、75歳ぐらいか。

水野:そういうことなんですね。

高橋:その樹木から毎年みかんの収穫を今年もしてきて。「ほんまにおじいちゃん、ありがとう」って気持ちなんよね。あと今年はあんまりみかんがならなくて、よく枯れてしまって。そしたらやっぱりおじいちゃんがもう、「わしの植えた木をあてにせんと、早くお前らでちゃんと植えよ」って私に言うてるんやって思って。

水野:なるほど。

高橋:「古くなったやつは切ってもええんぞ」って、おじいちゃんが言うてるんやって。だから植えなあかんなぁ、とかも思いました。

水野:農家のみなさんが、なぜ家族や代々受け継いだ農地を大事にされているのか、僕らにもわかりやすい理由を今教えてもらった気がします。都市部の自分たちが過ごしている時間概念とは、違うものが常に動いている。

高橋:そうなんよね。

水野:自分の家族のルーツにあたるひとたちのメッセージを想像する時間って、やっぱり都市部のひとは少ない。でも、長い時間のなかの一部に自分がいるんだって感じられると、安心感もあるだろうし。よい意味での責任も感じるだろうし。評論家の宇野常寛さんがね、京都とかに行くと、「歴史に見られている感覚がする」と。

高橋:あー、すごい。

水野:パッと見た寺が1000年前のもの、みたいな話が当たり前にあるし、歩く場所歩く場所でかつてひとが死んでいる世界じゃないですか。そう考えると、長い時間のスパンの先にいることで、もうちょっと視野が広くなったり。いろんなことが変わっていく。

高橋:人間のものではない巡りのなかに、人間が沿わせてもらっている感覚はあるかもしれんね。歴史とまではいかんけど、「先祖がこの土地を開拓してくれたんだな」とか感じながら農業をしていますね。農業を続けているひとたちは少なからず、そういうのは感じながらやっているんじゃないかなぁと思います。

水野:なんか、久美子ちゃんが農業やるってことを、不自然じゃないなと思ったんだよね。詩や物語を書くことと、そういう長い時間に触れたり、直にものを作って生命に触れたりすることが、すごく近い気がする。

水野:実は同じようなことというか。10年20年の樹木のスパン。もっと言うと、その世代がわかれても乗り越えていくスパンで考えると、歌とか作品って結局そういうことである気もする。


続けていくことがいちばん大事。


高橋:歌だって50年60年って、ずっと歌い継がれて残っていくものだからね。

水野:だから、続けていこうってことなんだよね。

高橋:前も話したかもね。続けていくことがいちばん大変だったりする。何事もすべて。

水野:たとえば、最高のみかんを作ろうと思ったとするじゃない。で、みかんが1個できました。そこで終えたら楽じゃん。「私は最高のみかんを作れました」っていう物語をずっと言い続けるのは楽じゃん。だけど、このみかんをもう1回作ろうとか、もっといいものを作ろうとか、探し続けるのって大変じゃん。

水野:農家のみなさんは毎年それをやり続けているよね。季節が変わり、年が変わり、天候も変わり、それに合わせて。

高橋:それを言ったら、音楽を作るひとたちと同じなんだよね。社会的ないろんな変化も気にしながら、作品を残していくのは一緒のことやね。そういうエネルギーの交換ができるといいよね。農家のひとは、わりかしラジオとか音楽とか聴きながら農業をしていて。

水野:あー、そうなんだ。

高橋:私もよく音楽を聴きながらするんやけど。そういうふうにいい循環が生まれていくといいなぁと思うんですよ。農家じゃなくても、音楽をやりながら少し土を触るとか。お百姓みたいな形でやってみるのもいいんじゃないかなって。それがまた作品にもいい影響を及ぼすんじゃないかと思いますね。

水野:さぁそんなわけで、話してまいりましたけども。コロナ禍、今後どうなるのか全然予想がつかないですけれども。今までも社会的な状況の変化はたくさんありましたから。

高橋:そうだな。

水野:僕らみたいなまだ40そこそこの年代でさえ、震災が目の前で起こったり、いろんなことがあって。社会が変わっていく様を何度か見ている。そのなかで農作物であるとか、僕らの場合では創作物であるとか、それを作り続けていくことが、大変だけれど大事だよね、というシンプルな感じなのかな。久美子ちゃんとはまたいろんな機会でお話したいですし、一緒に曲を作れればと思います。

高橋:やりたいねー。是非是非。

水野:また違った企画でね、やりたいと思っております。そんなわけで今日のゲストは高橋久美子さんでした。ありがとうございました。

高橋:ありがとうございました。



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