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新しいものを少しずつ熟していく

HIROBA TALK 
水野良樹×横山だいすけ

2019.07.01

2017年にリリースされた「さよならだよ、ミスター」。そして6月26日リリースの「愛したいひと」(「ハレルーヤ」と両A面シングル)。これまでに2度、楽曲提供させていただいた横山だいすけさん。
ストレートな表現が押し付けがましくなることも、それでいて淡白になることもない、横山だいすけさんだからこそ伝えることができる歌の世界観。
その背景には何があるのか。
新たなフィールドで活躍する今、どんなことを考えながら、チャレンジを続けているのか。
それが知りたくて、その明るい笑顔に会いに行きました。

新たな発見がある人生を過ごせているというのは、胸がときめきます

水野 HIROBA TALKに出ていただいて、ありがとうございます。よろしくお願いします。

横山 ありがとうございます!うれしいです。

水野 だいすけお兄さんが「おかあさんといっしょ」を卒業した直後に「さよならだよ、ミスター」という曲を書かせていただいて。

注釈:「さよならだよ、ミスター」 映画「くまのがっこう&ふうせんいぬティニー」主題歌となった、横山だいすけの1stシングル。水野良樹作詞作曲、蔦谷好位置編曲。2017年8月リリース。

横山 はい。

水野 そこが最初の出会いですよね。そして最近は「愛したいひと」という曲を書かせていただきました。当時出会った頃は、歌のメッセージを伝える意味でも、歌のお兄さんだったときとは違う角度で子どもたちと接することも必要になり、考え方も変わってきているとお話しされていましたよね。

注釈:「愛したいひと」 日本テレビ「ぶらり途中下車の旅」テーマソングとなった、横山だいすけの3rdシングル。水野良樹作詞作曲、本間昭光編曲。2019年6月リリース。

横山 そうでしたね。

水野 あれから2年が経って、今どういう姿勢で活動されているのかなと。そこから伺っていきたいと思います。

横山 はい。「さよならだよ、ミスター」のときは卒業したばかりでしたからね。あの曲は親御さんの気持ちも歌っているので、まだ自分が経験していないことを水野さんの言葉から想像しながら、また、コンサートに来てくれる親子のみなさんの様子をイメージしながら歌ったんですよね。

水野 はい。

横山 この2年間で大きく変わったのは、子どもたちにはもちろんですが、より広い世代の方々に歌を届けたいという思いが特に強くなったことですね。タレント活動はその広い世代の人たちに向けてのアプローチになりますし、一方で自分が取り組んでいる「世界迷作劇場」は、どちらかというと子どもを中心とした活動になっています。歌手としては、いろんな人がいろんな楽しみ方をできる歌を目指しています。なので、“どこに”ということはあまり意識しないで活動している感じですね。新曲の「愛したいひと」でもいろんな愛のかたちをイメージしながら歌わせてもらって。だいすけお兄さんがというよりは、横山だいすけが36年間で感じてきた恋愛であったり、家族愛であったり、友情愛であったりを、詞に込めて、メロディに込めて歌ったという感じですね。

注釈 「だいすけお兄さんの世界迷作劇場」 2017年から開催している、“世界の名作を、ちょっと不思議なミュージカル・コンサート仕立て”で見せる人気の舞台。

水野 あの曲の制作に入る数カ月前に一緒に食事をした際に、「自分の世界観を広げていきたい」ということおっしゃっていたのがすごく印象に残っていて。

横山 そうでしたね。

水野 たとえば「愛」というひとつの言葉にしても、いろんな解釈ができるものを横山さんは歌われた方がいいんじゃないかと僕も思っていて。そういった思いが横山さんご本人の気持ちともリンクしたんじゃないかなと思うんですよね。

横山 はい。

水野 反応としてはどうですか?フィールドが変わってきて、バラエティ番組に出たり、ドラマで実際の自分とは違う役柄を演じられてみて、ご自身のイメージ像が広がっている実感はありますか?

横山 もしかしたら世間から見たらちょっとの変化かもしれないですけど、自分のなかでは大きな変化だと思っていて、徐々にですが変わってきている意識はありますね。

水野 それはポジティブに捉えていることなんですか?

横山 うれしいことですね。ドラマでも「だいすけお兄さんのそんな姿見たことない」とか、「誰か分からなかったよ!」といったリアクションをいただけると、僕にとってはひとつの正解というか、新たな一面をみんなに届けられたんだなと思いますね。手探りの状態なので、やっていくなかで感じることよりも、やったあとに振り返って「変わったの“かもな”」ぐらいな。実感としてはすごく変わったというよりは、“かもな”という感じですね。

水野 ファンのみなさんのリアクションはいかがですか?例えば、今までは知り合えなかったタイプのファンの方との出会いなんかはありますか?

横山 ファンの方はどうしても今までのイメージがあるので「だいすけお兄さん、こういうこともするんですね」という驚きの声が多いですね。

水野 うんうん。

横山 新たなファンの開拓という点では、まだ大きな実感はないんですけど。それこそ歌手活動は、だいすけお兄さんという存在を知らなくても、ひとつの音楽を通して「いい歌だな」とか、「歌のお兄さんだった人がこういう歌を歌っているんだな」といった新たな魅力を感じてもらえたらいいなと思いますね。

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水野 なるほど。でも、横山さん、明るさはまったく変わらないですよね。

横山 そうですか(笑)。

水野 いったんひとつのイメージ像ができあがって、それをいろんな人が喜んでくれる、だから頑張る。それは素晴らしいことなんだけど、期待を裏切ってはいけないし、頑張り続けることはすごく大変なことじゃないですか。でも、そこで湿っぽさが出ないというか、常に明るく挑戦しているという感じがありますよね。

横山 そうですね。だいすけお兄さんと横山だいすけで、同じところもあれば違うところもあるというか。卒業したからといって全てが変わるかといったら、そんなことはないですし、今の活動のなかにもちゃんと残っていて、さらに新たな挑戦もできるというのは幸せなことですよね。好きだと思えることをやり続けながら、新たな発見がある人生を過ごせているというのは、胸がときめきますよね。

水野 はいはい。

横山 音楽の出会いもそうですよね。新しい歌をいただいたときに「こんな歌を歌えるんだ」と思えたり、「これ、自分に歌えるかな」とか。いろんな感情のなかで、歌えば歌うほど自分の味になっていくというか。音楽を通して「歌が好きなんだな」と思える瞬間があるというのは、いろんな場面で感じますね。今度、人生初のソロアルバムを出すんですが、「自分は歌うことが本当に好きなんだな」と思える瞬間が歌っている最中にもあって。

注釈:メジャー1stオリジナルアルバム「歌袋」を2019年7月にリリースする。

水野 それは、いいですね。

横山 幸せだなと思いましたね。

水野 いやぁ、いいですね。本当に歌が好きなんですね。

横山 好きですね。やっぱり楽しいですね。

水野 「さよならだよ、ミスター」をつくったときも思いましたけど、この2年間いろんな方に楽曲提供させていただいて、同じ言葉でも「その人が歌うからこそ成立する」「その人が歌うからこそ、ポジティブな意味で予想を超えるイメージが生まれる」ということがたくさんあって。他のシンガーが歌ったときには押し付けがましくなってしまうことも、横山だいすけさんだとそうはならない。横山だいすけさんだからこそ、ストレートな表現が成立する。歌い手の人間性が出るというか。そこは強く思ったことですね。ご自身の歌の特長はどう捉えていますか?

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横山 僕は自分ではそんなに歌が上手いと思っていなくて。でも、横山だいすけが歌う歌というのは、歌のお兄さんというバックボーンがあるからかもしれませんが、詞を届けたいという思いがすごくあって。歌い方なのか、情景を自分自身がイメージして歌うというところでは分かりやすいというのかな。詞が届きやすいところは、自分の長所なのかなと思える部分ですね。コンサートなんかでも、僕の歌はちゃんと聴き取れると言っていただけて。でも、それは長所であると同時に、堅く聴こえてしまうという短所にもなり得るんですが。自分にとって歌というものは「詞とメロディがひとつのかたちとなって相手に届いたらいいな」「詞の景色が届いたらいいな」と思って歌っているので、それが特長につながっているのかなと思いますね。

水野 丁寧なんですね。

横山 丁寧でありたいとは思いますね。

水野 最初のバックボーンである、お子さんたちに歌っているというところは、僕も子どもがいるので思うのですが、やっぱりはっきりと歌うことは必要なんですよね。聴き取れないといけない。そしてさらに言うと、子供達は言葉のすべてを理解できるわけではないので、多少なりとも“意味”を越えていかないといけないんですよね。言葉が説明を必要としないものになっていないといけない。言葉に意味以上のイメージのふくらみがないといけない。

横山 はいはい。

水野 それは子どもに向けての作品だけでなく、多くの人に聴いてもらうためのポップスを考えるうえにおいて、すごく重要なことですよね。今、横山さんが新たな広い舞台で歌うときに「ポップスシンガーとしてどうあるべきか」というところにつながっているんだろうなと。

横山 うんうん。

水野 (楽曲をプロデュースした)蔦谷(好位置)さんも本間(昭光)さんもおっしゃっていましたけど、やっぱりその明るさが素晴らしいんです。切ないフレーズやメロディ的にキュンとするようなところが、横山さんが歌うと必要以上に悲しくならないというか。希望を抱けるんですね。その理由は何なんだろう?と不思議に感じるんですが、その分からないところが魅力なんでしょうね。横山さんしか持っていない魅力ですよね。

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新しいものを少しずつ熟していく

横山 逆に同じ質問を僕がするとしたら、水野さんは自分の特長をどう捉えているんですか?

水野 うーん。同じような答えになってしまうんですが、長所であり短所でもあるんですが…「交通整理みたいな曲だな」みたいな(笑)。

横山 「交通整理みたいな曲」ですか?

水野 例えば、車が来て「ハイ、こっちです」みたいな。分かりやすく「今からサビいきますよ」「ここから少し悲しくなって、一瞬引いて、そこから盛り上がりますよ」みたいな、メロディのなかで説明がついている曲というか。みなさんの感情を誘導するというか。

横山 はいはい。

水野 それがある種、聴いているみなさんにとっては安心材料になって、次の展開が予想できるんですね。ただ、安心して楽しめるというのは一方で「ベタだよね」ということになりがちなんですが。そこが僕の長所であり短所ですね。「水戸黄門」って展開が分かるじゃないですか。印籠が出てくる時間がだいたい決まっていて、最後の成敗の仕方もみんな知っている。だけどそれが楽しい。そういうものに憧れたりはしますね。スタンダードになるものというか。

横山 今のは、お客さんや聴き手の方に対してのことだと思うんですけど、歌い手にとってもしっくりくる部分があって。持っているものを自然と引き出してくれるような温かさを水野さんの楽曲からは感じるんですよね。自分が意識していないことまでも、気がついたら音楽に乗っけてもらっているような印象がありますね。

水野 ああ、それはうれしいですね。そうでありたいと思います。歌い手さんの気持ちが乗れた方がいいですから。

横山 はい。

水野 誰が書いたかということを意識しないで、ご自身の言葉だと思って、歌ってもらえるのがいちばんいいんですよね。そこに近づければとは思いますね。でも、当たり前ですが、僕は横山だいすけにはなれないじゃないですか。

横山 そうですよね。

水野 理解しようとすることはできても100%理解することはできなくて。でも、100%理解する必要もないというか。他人の僕が提示するほうが、ご自身で書くよりも、より広くなる瞬間もあると僕は思っていて。それこそ、いきものがかりではそういうグループなので。

横山 はいはい。

水野 そこはお互いが寄り添い合うというか。歌い手や作り手、サウンドをつくるプロデューサーがいて、アイデアを出しあっていくことで、より広い人に伝わっていくという構図なのかもしれないですね。例えば、「世界迷作劇場」では童謡やスタンダードを歌いますよね。いままで歴史上、何千人何万人ものシンガーが歌ってきたであろう歌を歌う。でもそれらの名作を歌っても横山さんの歌は“横山だいすけの歌”になっていることのすごさがありますよね。

横山 いやいやいや、そんな。ありがとうございます。

水野 それは、すごいことですよ。それは何なんでしょうね。

横山 何なんですかね。

水野 「おかあさんといっしょ」の頃の歌とも違うと思うんですよ。

横山 そうですね

水野 広い視野を持とうとされている今の歌は違うし、5年、10年経ったらまた全然違うじゃないですか。

横山 そうですね。本当に自分でもどうなるのかなと思いますね。

水野 楽しみじゃないですか?

横山 楽しみですね。本当に変わってきているなという実感はあるので、これまでやってきた童謡というのも、今の自分に合う歌い方になっていくでしょうし、「おかあさんといっしょ」を飛び出して今3年目になりますけど、5年後、10年後にどういう姿で、どういう歌を歌っているのかというのは、今考えてもワクワクしますね。

水野 そうですよね。この数年で歌うテーマも増えていくでしょうし。

横山 はい。

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水野 今、アルバムを制作していて、いろんなテーマの歌を歌っていると思います。恋愛の曲もあるだろうし、友情や別れでもいろんなパターンのものがあって、道はいくつもあると考えたら、すごく面白いし、そこでまた僕も作り手として会いたいなという思いがありますね。

横山 そうですね。

水野 「10年前はできなかったけど、今ならできますね」みたいなこともあるかもしれないし。

横山 それは面白いですね。人生のなかで、たった2年かもしれないですけど、そのなかでも大きく考えも変わってきているし、2年前はできなかったことが今はできるというか、そういうこともたくさんあって。発見があることはワクワクしますよね。

水野 ああ、それは素晴らしいことですね。

横山 自分自身が楽しみながら、いろんなことをやっていきたいなというのがありますね。

水野 なんか…定期的に会いたいですね(笑)。

横山 会いたいですね(笑)。

水野 定点観測をして「今、何やっているんですか」みたいな話をしてね。

横山 前に食事したときも、そんな感じでしたもんね。

水野 あれからも僕も変わっているし。

横山 そうですよね!あのときは、まだ放牧中でしたもんね。

水野 そうです。集牧していろいろ感じることもありますから。

横山 常に新たなことにチャレンジされて。

水野 いろいろやり過ぎて、何やっているのか分からなくなってますね(笑)。

横山 ハハハ(笑)。分からなくなる瞬間ってありますよね。

水野 自分がどこに立っているのか分からなくなるときもあるんですけど、今はそういうタイミングなのかなと思ってやっていますね。いろんな活動をするなかで、出会いも広がったんじゃないですか?

横山 そうですね。新しい出会いも、もちろんあるんですけど、新しいものを少しずつ熟していく2年間だったんじゃないかなと。

水野 新しいものを熟していくってすごくいい表現ですね。

横山 1年目は新しいものだらけ、2年目も新しいものがあったんですけど、1年目に感じたものを少しずつ自分のものとして落とし込んでいくという作業ができてきて。

水野 いやぁ、ほんとに真面目ですね。

横山 いやいや。

水野 今までひとつのことをやり続けてきた人が、新しいことに挑戦するというのは、みんなに分かりやすいストーリーじゃないですか。

横山 はい。

水野 それで頑張っているように見えるし、自分でも満足してしまえば満足できてしてしまうと。でもそこで満足せず、さらに経験を積んでいきたいという、すごく真摯な姿勢ですよね。それで広がった新しい道をさらに歩んで、それがまた軸となる。枝が幹になるというか。その姿勢は見習いたいですね。

横山 いやいや、見習いたいだなんて…勘弁してくださいよ(笑)。

水野 僕なんか「いろんなことに手出しすぎ」って言われますから(笑)。

横山 ハハハ(笑)。僕も言われますよ。「どこに向かってるんだ?」って。

水野 すべて楽しいですけど「これはより深く知りたい、勉強したい」と思うことが僕にもあって。

横山 はい。

水野 それを大事にしていきたいという気持ちもあるし。今はいろんなことをやられているけど、10年後には「これだ!」って思うものがあって、横山だいすけというアーティストを表現するときに、その言葉が増えているかもしれないですよね。

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横山 増えていたらいいですよね。水野さんがおっしゃるように、選択肢がたくさんあるからこそ、何を選んでいくのかなという、日々チョイスの連続なんですけど。「これ、楽しいかも」と思えるものを集めて、それがどんどん自分の引き出しに詰め込まれていく。そういうものが増えていったら眠っていた引き出しに入っていたものが、何かの瞬間に「これとこれを合わせたら面白いかも」という発見になったりして。

水野 そうですよね。

横山 そうなったらいいなと思いますね。

水野 最終的に結びつくんですかね。

横山 どうでしょうね。結びつくことも、きっとありますよね。

水野 僕は小田和正さんと一緒に曲をつくらせてもらって、最後に小田さんと対談したときに、「今やっている新しいことと、いきものがかりでやっていることは全然違うな。でもいつか、それがつながるよ」と言われたんですよ。

横山 えー!

水野 小田さんもいろんな経験をされてきて、そうおっしゃったんだと思うんですけど、すごく励みになったんですよね。今違うことに見えているものが最後につながって、すごい化学反応が起こるかもしれないですよね。

横山 それはすごく面白いですよね。でも、小田さんがおっしゃるんだから間違いないですよね。

水野 ハハハ(笑)。そうですよね、信じられますよね。希望になるというか。

横山 そうですよね。

水野 いやぁ、今日はありがとうございました。アルバムも楽しみにしています。

横山 こちらこそ、ありがとうございました!

水野 またご一緒したいですね。

横山 よろしくお願いします!

(おわり)

横山だいすけ(よこやま・だいすけ)
歌手・俳優。
「おかあさんといっしょ」で、番組史上歴代最長となる9年間にわたって歌のお兄さんを務める。2017年4月の卒業後は、 歌手活動のほか、ドラマ、バラエティ、舞台、声優など幅広く活躍。2019年7月24日に初のメジャーオリジナルアルバム「歌袋」をリリースする。
横山だいすけオフィシャルHP

Photo/Kayoko Yamamoto
Text/Go Tatsuwa
Hair & Make/Yumiko Sano,Chinami Ando
Styling/Chisato Yoshioka


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ソングライター水野良樹が主宰するHIROBAの公式noteです。 『考えること、つながること、つくること』 その3つを豊かに楽しむための広場=HIROBAをつくっていく試みです。 定期購読マガジン『HIROBA公式マガジン』のご購読もよろしくお願いします。
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