読む『対談Q』世武裕子さん(映画音楽家)前編③
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読む『対談Q』世武裕子さん(映画音楽家)前編③

HIROBAの公式YouTubeチャンネルで公開されている『対談Q』。こちらを未公開トークも含めて、テキスト化した”読む”対談Q

今回のゲストは映画音楽家の世武裕子さん。
10月28日発売の『OTOGIBANASHI』にて「哀歌」という楽曲をサウンドプロデュースしてくださっています。水野良樹とは、なんと同い年。はからずも同級生対談となった2人のトークは、笑顔が絶えない明るいトーンのまま、さりげなく深いところまでたどり着きます。



前回のつづきから↓

「火を見るより明らか」だけど伝わらない

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水野:他のひとが曲の判断をするときに、AとBって判断があったら、僕的にはAしかありえないんだけど「Bもあるよね」って言われて。

世武:うん。

水野:こちらは意味がわからない。「え、火を見るよりも明らかじゃん」みたいな感覚になっている。

世武:はいはい。

水野:そういうのが本当にいろんな場面であって。途中で気がついて。あ、これは説明できないとダメなんだっていう。他のひとには伝わらないんだって。

世武:ああ、それ、わかる気します。

水野:でも、論理じゃないんだもんな。自分だって「映画音楽って、どうやって作るんですか?」って世武さんに訊いちゃうから。「セリフを見ているんですか? それとも、お芝居の表情を見ているんですか?」なんて訊いちゃいそうなんだけど。

世武:インタビューでよく映画音楽の作り方とかを訊かれるときに、映画音楽もすごく好きだし、仕事の話をするのも好きなんですけど、本当は私「めんどくさいな」って思っているんですよ(笑)

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世武裕子さん(映画音楽家)
映画音楽作曲家。近年手がけた主な映画に『Pure Japanese』(松永大司監督/22)『空白』(吉田恵輔監督/21)『Arc アーク』(石川慶監督/21)『星の子』(大森立嗣監督/20)などがある。また、編曲家・演奏家としてもFINAL FANTASY Ⅶ REMAKE、Mr.Children、森山直太朗などさまざまな作品やアーティストを手がける。

水野:ははは。

世武:「火を見るよりも明らか」 って話に近いと思うんですけど。いちいち説明するまでもないことじゃん、みたいな。もう小さな子供のときから、“そうだから、そう”…なんだけど、みたいな。

水野:でもそんなふうに言うと、YouTube観ているひとは「俺に役立たないじゃないか」ってなっちゃう(笑) みんな「映画音楽をやっている世武さんが出てくるんだ、どうやったら作れるんだろう」って。その方法論が聞けると思ったら、世武さんは「やったら、こうなるじゃん」って。

世武さんにチャンネル登録者数が少ない!と、突っ込まれたHIROBA公式YouTubeチャンネルです。ぜひチャンネル登録お願いします。

世武:あはは。

水野:説明ができるものじゃない。

世武:うん。だから滅多に私、自分の仕事の話ってしないんですよね。そうやって訊かれたときくらい。そういう話にあんまり興味がなくて。「なんでそうなったか」とか。

水野:そうか。そこには(世武さんのなかでは)謎がないんだ。

世武:そう。それをすごい楽しそうに…。バンドマンとかって、すごく音楽の話とか好きだから。

水野:あれはねぇ、宣伝をしなきゃいけないのと、語っている自分が好きなんだと思う。自分がそうだから、気持ちよくわかる。

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世武:はは。

水野:論理立てて話して、自分を安心させたいというのもあると思うんですよ。ああ…なんかこれ…角が立つな。

世武:無駄な質問しちゃってゴメン(笑)。たとえば、テクニカルな高度な話とかもみんな好きだし、いや、別にその話をしたくないわけじゃないんだけど、私はあまり興味がなくて。映画音楽は本当に大好きなんですよ。すべてのことよりも優先しちゃうぐらい好きなのに、そういう話をするのには全然興味がない。

水野:うんうん。

世武:私これでもバンドマンの友達もいるので、話していたことがあって。

水野:はいはい。

世武:私はずっとクラシック育ちなんですけど、クラシックで育ったひとって、あんまり「この曲の何が良い」とかをみんなで楽しんでいる文化がないんですよ。「これを何回も聴いて、いかに自分がうまく演奏できるか」っていう教育を受けてるから。

水野:そうなのか。

世武:たとえば「このバンドのこのギタリストのこの音ヤバいよね」とか「ここでセブンス入れてくるのいいよね」みたいなタイプの話が、あんまりない。

水野世武さんは、行為が楽しいんでしょうね。作ったり、演奏したりっていう行為がいちばん大事。

世武:ああ、うん。

水野それを分析したり、話したりっていうのは、行為じゃなくて、評論的な楽しみ方じゃないですか。

世武:私あんまり音楽を聴かないんですけど、それはそういうことだと思う。「家でよくそんな無音だね」って言われるぐらい無音なんですよ。

水野:なるほどね。そういうタイプなんだ。

世武:かたや、そういうバンドマンたちってすごくいいリスナーだなって思うんですよ。だから羨ましい気持ちもある。細かい話をして「〇年代のギターだ」とか「そのひとが使っているギターを、派生して次はこのひとが…」って話を楽しむのがちょっと羨ましいなって。

水野:同感です。

世武:そういう輪には入ってないの?

水野入れない。ずっと入れない。どこにも居場所がないの!音楽家のコミュニティーにも居場所がないし、そこを外れても居場所がないけど、なんか居るっていう。

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世武:水野さんは友達とかいるの?

水野:いないんですよ。

世武:寂しくないんですか。

水野:寂しくは…寂しいのかなぁ。

世武:興味はあるの?

水野:多分ねぇ、ないんですよ。そこが多分、僕がいちばん人間として抱えている欠陥で。他人に興味がないんですよ。

(後編①-未公開トーク-につづく)

いきなり水野から「他人に興味がない」というキラーワードが飛び出たところで「問い=Q」はさらに展開していきます。続きは後編にて。


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