読む『対談Q』 水野良樹×高橋久美子 第1回:コロナ禍、それぞれの土地の日常。
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読む『対談Q』 水野良樹×高橋久美子 第1回:コロナ禍、それぞれの土地の日常。

HIROBA

HIROBAの公式YouTubeチャンネルで公開されている『対談Q』。こちらを未公開トークも含めて、テキスト化した”読む”対談Qです。

今回のゲストは作家・作詞家の高橋久美子さん。


地元の農業のほうを見たとき、また全然違う現実があった。


水野:さぁ、対談Qです。今日はコロナ禍の日常を緩やかに振り返りたいと思います。そのゲストと言えば、この方じゃないかなとお呼びしました。作家・作詞家の高橋久美子さんです。よろしくお願いします。

高橋:よろしくお願いします。

水野:もう久美子ちゃんと呼んでしまいますけれども。ほぼ同志のような感じで。

高橋:そうね、同じ年だし。


高橋久美子(たかはし くみこ)
詩人・作家・作詞家
1982年愛媛県生まれ。チャットモンチーのドラム、作詞家を経て2012年より作家に。主な著書に、小説集『ぐるり』、旅行記『旅を栖とす』、詩画集『今夜 凶暴だから わたし』、エッセイ集『いっぴき』、絵本『あしたが きらいな うさぎ』など。様々なアーティストへの作詞提供や絵本の翻訳も多数。最新刊『その農地、私が買います』が発売中。


水野:デビューも同時期で。一緒に曲を作ったり、本を出すたびにラジオとかに来てもらって。HIROBAでも昔『茶会』というものがあったんですが、関取花さんと3人で代々木上原のカフェで喋る企画もやっていただいたり。



高橋:あれがコロナの直前やったよね。

水野:そう。実はあれから2年ぶりだから久しぶりなんだよ。その間にいろんなことが起きたということで、今日のテーマは、「2021年の“日常”を振り返る」です。コロナ禍の日常を振り返る。まずトピックスとして、高橋さんが『その農地、私が買います』という本を出されました。



水野:ご実家の地域で、農業をやっていた農地を、後継者がいないとか様々な理由でみなさんが売ってしまうと。そこに業者の方々がやってきて太陽パネルをつけていく。

高橋:そうなんよね。

水野:それが高橋さん的には「うーん、どうなんだろう」と。故郷に対するいろいろな思いがあるなかで、「だったら私が農地を買って、農業をやります」と決意されて。僕もこの本を読んで初めて知ったんですけど、今まで農業をやってないひとが農地を買うということにはすごく高いハードルが…。

高橋:そうそう。

水野:法律的にも手続き的にもハードルがあって。実際に現地で農業をやられている方とのやり取りとかも、一筋縄ではいかない奮闘劇が書かれているんですけど。このラストがまたね。

高橋:痺れるのよ。

水野:衝撃。大変だったね。

高橋:大変でしたねー。まだ現在進行形で。

水野:そうだよね。すごい時間を過ごしていたのね。

高橋:そうなのよ。2020年はピタッと止まっていたんだけど、2021年後半からは徐々に動き始めた感じがあって。愛媛に帰って農業したり。

水野:はいはい。

高橋:やっぱりミュージシャンとか、詩人とか、作家とかをやっていたりすると、自分の理想とか、作りたいもののなかで生きているよね。だけど地元の農業を見たとき、全然違う現実があるんだなってことも知って…。知っとったはずなんやけども、見てなかったところを改めて見た年でもあったかなぁ。

水野:うんうん。

高橋:水野くんも『OTOGIBANASHI』っていう作品を作って。小説家の方々が歌詞も書いて、水野くんが曲をつけて。それをわりと俳優さんとかが歌っているのがよかったね。

水野:そうそうそう、伊藤沙莉さんとか、柄本祐さんとか。



高橋:俳優さんも歌うし、ミュージシャンも歌うし。そして小説も入っているんですよね。こういう新しい実験的な試みをしているのを見ると…。

水野:全部説明してくれた(笑)。

高橋:こういうものが、心の栄養になって何かを動かしていく感覚があるなぁと。やっぱり創作活動を私も続けていきたいし、地元に帰って農業もやるときはやりたいし。両方やっていけたらなと思った1年でしたね。


農作物はそのひとの生き写しだと思う。


水野:高橋さんは、2年前ぐらいに農地を買うアクションを始めて。最初は二拠点生活というか、都内での生活もあり、なおかつ、ご実家のほうで農業もやる。それができるんじゃないかって思っていた。その矢先にコロナで。

高橋:そうなんよなぁ。

水野:農地っていうのは、土地をそのままにしちゃいけないわけですよね。たとえば草刈りとかメンテナンスをしなきゃいけない。ありとあらゆることをやっていかなきゃいけないんですけど、それができないまま、妹さんとかがやられていたり。

高橋:そうなのよ。お父さんに、「東京におるやつに何ができるんや」ってよく言われていたんだけど、それが身に染みてわかった。農業ってやっぱりそこにいないといけない。医療とかもそうですけどね。ちなみに水野くんは農業をやった経験とかは?

水野:農業はないなぁ。だから本を読んで、こんなに難しいんだなって思いました。

橋:でも楽しいよ。楽しいんやけど、みんながしんどいしんどい言うから、どんどんしんどくなっているようなところもあって。大変っていう固定概念がないからこそ、ポーンと飛び込んで楽しんでやれることもあるから。

水野:僕は、農業ってもう確立された教科書みたいなものがあるのかなって思っていたんです。でもたとえばこの作品のなかで、サトウキビを作るくだりがあって。サトウキビを作られている方のところに飛び込んでいって、苗を分けていただいたり、工程を見たり。

高橋:そうね。

水野:その話を読んでいると、その都度で自由は判断というか。創作性というか。芸術作品を作るのと同じで、そういうものを重ねていかないといけないんだって。

高橋:農作物はそのひとの生き写しだと思う。作品なんやと思う。例えば、農薬を使って綺麗なものを作るっていう人もいれば、虫に食べられても無農薬で作るっていう人もいるし。だから教科書はあるっちゃあるけど、ないよね。土地によっても全然育ち方が違ったりするし。

水野:場所によっては同じ作物でも作り方が変わってくるというか。

高橋:何日までに植えないかんっていうのも、長野と愛媛では全然違ったりね。


地方と都市部の危機感は全然違う。


水野:コロナ禍で二拠点生活を目指したとき、都市部と他の地域との考え方の違いって、どうバランスを取っていたのでしょうか。緊急事態宣言とかが出されてない時期もあったじゃないですか。一応、愛媛に戻れる時期もあったでしょ?

高橋:そう。戻れるのよ。社会的には戻っていいんだけど…。

水野:戻ってしまったら、地方の方たちの目が気になってしまう。

高橋:そうそうそう。これはもう私だけじゃなくて、地方出身の子はみんな言っていたよね。お母さんは帰ってきてほしいって言うんやけど、やっぱりご近所さんの目を考えると危ない。そういう意味での危なさ。

水野:もちろん感染を広げないという意味がありつつ、それだけじゃなくて…。

高橋:「今、なぜ東京から来るんだ」って。だから「あのおうちにはしばらくは行かないでおきましょう」みたいなのもあったりする。この2年間、最初のうちは非常事態だなって思っとったんやけど、それが慣れてきたことない?

水野:わかります。

高橋:Zoomの使い方なんてわからんかったけど、もうリモート会議もちょちょいのちょいやし。最初は配信ライブでも必ず、「すみません、音が聴こえません」みたいな子がおったのに、そんなこともあまりなくなったり。

水野:あとトラブルあっても、みんな許してくれる(笑)。そういうもんだってわかっているから。

高橋:そうそう、ちょっと音が割れても許してくれる。家族に会わないことにも慣れてきてしまったところがあったなぁと思って。けど、やっぱり実際に11月に1か月帰ってみて、お互いどう考えていたかがわかった。今までは簡単に飛行機に乗って帰って会えていたんだけど、会うことが今まで以上に貴重。だからこそ、会っている時間が濃密になるという感じかな。水野くんはどう?

水野:こないだ、久しぶりにいきものがかりのライブDVDが出たので、全国のプロモーションに回れたんですよ。で、イベンターさんたちに挨拶しに行ったの。そのときにやっぱり、地方と都市部の危機感は全然違うんだなって思った。温度感というか。

高橋:そうねー。

水野:それはさっき言った、感染に対する恐怖感もそうだし。ライブやイベントが盛り上がりはじめた都市部と、三大都市ではない地域のイベンターさんが持っている危機感とかも、やっぱり全然違うなって。

高橋:そうなのかー。

水野:震災とかだと、応援する側と、震災に遭ってしまった側とって、わりと分かれちゃうじゃん。良くも悪くも。

高橋:うんうん。

水野:だけどコロナは、「明日、自分がかかるかもしれない」みたいなことをみんな背負っているから、レベルは違えど、全員が当事者だって思ってた。でも、そのなかでも会えなかったり、距離ができてしまったりで、それぞれが持つ危機感って、全然違うところにあるんだなぁって。


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