読む『対談Q』 水野良樹×武部聡志 第1回:ユーミンや吉田拓郎からもらった財産。
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読む『対談Q』 水野良樹×武部聡志 第1回:ユーミンや吉田拓郎からもらった財産。

HIROBA

HIROBAの公式YouTubeチャンネルで公開されている『対談Q』。こちらを未公開トークも含めて、テキスト化した”読む”対談Qです。

今回のゲストは音楽プロデューサーの武部聡志さんです。

残っているひとたちに共通するもの。


水野:さぁ対談Qです。今日のゲストは、音楽プロデューサーの武部聡志さんです。よろしくお願いします。

武部:どうもお邪魔します。


武部聡志(たけべ さとし)
1957年2月12日生まれ。東京都出身。作・編曲家、音楽プロデューサー。
国立音楽大学在学時より、キーボーディスト、アレンジャーとして数多くのアーティストを手掛ける。1983年より松任谷由実コンサートツアーの音楽監督を担当。一青窈、今井美樹、ゆず、平井堅、JUJU等のプロデュース、CX系ドラマ「BEACH BOYS」「西遊記」etcの音楽担当、CX系「MUSIC FAIR」「FNS歌謡祭」の音楽監督、スタジオジブリ作品「コクリコ坂から」の音楽担当等、多岐にわたり活躍している。

武部:今回このプログラムには僕のほうから水野くんのTwitterに呼びかけて、「おもしろそうだから呼んでよ」って。

水野:もう我がチームは喜んじゃって。武部さんが、「水野くん呼んでよ」みたいなことを呟いてくれたよってチームに伝えたら、「これはお呼びしましょう」と。

武部:押し売りみたいで申し訳ないですけど。笑。

水野:いやいやいや。それで今回来ていただきました。もちろんいきものがかりもいろんな音楽番組でお世話になっていますし、本当に大先輩なんですけれども。武部さんと音楽の話をご一緒できないかなと。

武部:はい、ざっくばらんに。

水野:一応テーマを用意しました。武部さんに聞くならこれだろうと思いまして。ありとあらゆるジャンルのアーティストと触れ合ってこられた武部さんが考える、「良い音楽家とは?」。すごく抽象的なテーマなんですけど。

武部いちばん簡単そうで、いちばん難しくて、いちばん深いテーマですよね。

水野:はい。

武部:常日頃から仕事をしていくなかで考えさせられるテーマでもあるし。果たして音楽によい悪いはあるのか。よい音楽家、悪い音楽家はいるのか。ただ、僕は今年で仕事はじめて45年になるんだけど、やはり残っているひとたちにはみな共通する何かがある、っていうことをお話できればなと

水野:はいはいはい。


どこの瞬間を切り取るか。


武部:『THE FIRST TAKE』で僕が橋本愛ちゃんと一緒にやったときに、水野くんが、「感動した」ってコメントをくれたじゃない。それがすごく嬉しくて。「良い音楽家とは?」ってテーマとは外れると思うんだけど。音楽って、演奏するひと、曲を作るひと、関わるひと、パフォーマンスするひとの、何らかのエネルギーとか思いとかそういうものがこもる。

水野:はい、はい。

橋本愛 『木綿のハンカチーフ』 / THE FIRST TAKE

武部:それが伝わったとき、ひとが感動したり、心を震わせたりするんじゃないかな。だからよい音楽家って、そういうものを音に封じ込めることができる。ひとに伝えたいと思っていると思うんですよね。小手先でカッコいいものを作ろうとか、売れたいとか、そういうひとたちもいるじゃない。体裁を整えるみたいな作り方とか。

水野:うんうん。

武部:でもそれよりも何よりも、もっと本質的なところでひとに刺さる音楽をお届けできるかがすごく大事なことだと思います。

水野:橋本愛さんの『THE FIRST TAKE』は、すごい演奏ですごい歌なのに、むしろそこに目がいかず、ただ感動するというか。技術とか、うまさとか、ルックスとか、表面上に現れるものだけじゃなくて、なんか感動してしまう。そのときに他に作っていた制作物があったので、今の自分はそういう態度で臨んでいるだろうか…って反省させられるような…。

武部:うーん。

水野:もちろんそういう態度でいたいんだけども。自分は何を作っているんだろうと、思い返させられるようなパフォーマンスでした。そこが今のお話と繋がっているのかなって。何かを込めるためにはどうすればいいのでしょうか。

武部どこの瞬間を切り取るかみたいなことにもなってくるじゃない。たとえばレコーディングでも、テイクを積み重ねて、ディティールまで整理して作り上げる美学。建築を作るような美学。一方で、ちょっと雑だとしても、パッと煌めいた瞬間を切り取ることも大事だと思うの。僕はどっちかというか、後者のタイプ。

水野:エネルギーが今こもっていると、わかるかどうかも差がある気がしていて。武部さんはそういう感覚をどうやって養われたのでしょうか。

武部:僕はいろんなアーティストの背中を見て育ってきたから。今、気合いが入ったなとか、スイッチが入ったなとか、本気だなとか、こういうこと考えてやっているなとか、なんとなく背中から感じられるのかもしれない。幸い自分が関わってきたアーティストって、ユーミンにしても吉田拓郎にしても、パイオニアじゃないですか。

水野:なるほどなるほど。

武部:そういう先輩たちからもらった教訓というか、身をもって教えてくれたことって、自分の財産ですよね。


自己満足的に思いを込めすぎると、曲がうまく伝わらない。


水野:どう違うんですかね。拓郎さんやユーミンさん、もちろん武部さんも、レジェンドっていうか。ユーミンさんが僕と同じくらいの30代だったときって、どんなふうに音楽と向き合っていたんだろうなって。

武部:ユーミンが30代のときは、とにかくイケイケだったでしょう(笑)。我々もイケイケだったし、時代も時代だった。ただ彼女はやっぱり詞を書くとか曲を書くとかひとりの孤独な瞬間と、大勢のひとの前でパフォーマンスするときの落差がものすごくあるじゃない。

水野:あー、そうなんですか。

武部:ひとりのときは、涙を流しながら書くような繊細さを持ち合わせているし。一旦ステージに上がれば、エンターテイナーとしてひとを惹きつけることに全身を傾ける。ひとは「天才」って言うかもしれないけど、ものすごい努力家ですよね。日々、好奇心の塊でいろんなものを吸収して、それを曲の題材やヒントにして。よく言われたのは、「あんまり自己満足的に思いを込めすぎると、その曲がうまく伝わらない」と。

水野:なんでなんでしょうねぇ。

武部「私はやっぱり曲の世界のストーリーテラーでありたい」というか。よく自分が書いた歌詞とか曲をナルシスト的に歌うひともいるじゃない。でもユーミンとか拓郎さんはそうじゃないと思う。もっと自分の作品を俯瞰で見て、そのストーリーを真摯に伝えようとする。魂を込めてやっている感じがするんですよね。

水野:魂を入れ込むと、どうしてもまさにナルシズムに近づいてしまいがちだけれど、そういうことではなくて。作品自体がどう素晴らしくなるかとか、これが世に渡ったときにどう受け止められるかとか、そこに自分の身を捧げるというか。

武部:そうそうそう。

水野:自分の考えや工夫を注ぎ込むみたいな。

武部:深い話してるね、今日。

水野:今、ユーミンさんはたしかにそうなんだろうなって思ったんですけど。僕は拓郎さんもそうだって伺って意外だなと。拓郎さんってどうしてもオフィシャルイメージは、注ぎ込むタイプの方だって思われがちじゃないですか。

武部:あー、うんうん。

水野:でもやっぱりどこか俯瞰で作品を見ていて、自分がこれを言うことでどういう反応が起こるか、すごく客観的に見た上で言葉を選んでらっしゃったのかなって、今お話を伺っていて思いましたね。


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