読む『対談Q』 水野良樹×柴田聡子 第2回:私は人間をやめられないんですよね。
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読む『対談Q』 水野良樹×柴田聡子 第2回:私は人間をやめられないんですよね。

HIROBA

HIROBAの公式YouTubeチャンネルで公開されている『対談Q』。こちらを未公開トークも含めて、テキスト化した”読む”対談Qです。

今回のゲストはシンガーソングライターの柴田聡子さんです。

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「これはいいかもよー!逃すなよー!」って瞬間。


水野:どこがいちばん嬉しいですか?

柴田:え? どこがいちばん嬉しい…。

水野:歌っていて、「うわ、めっちゃ泣いている」って嬉しいとか。歌っていて気持ちいいとか。作った瞬間が気持ちいいとか。喜びポイントみたいな。

柴田:難しい。いっぱいありますもんね。どうしようかな。でもやっぱりいちばん楽しいのは、「あ、すごい、いい曲ができそう!」みたいなそういう瞬間。

水野:予感がふわふわふわーって来る。

柴田:ありませんか? 「これはヤバいぞ、絶対に決めるぞ」みたいな。

水野:はい、はい。

柴田:そういうときは緊張しているけど、すごく楽しいというか。喜びという感じですね。

水野:そのとき何か見えているんですか?

柴田:いや、何も見えてないかもしれないんだよなぁー。

水野:「来るぞ来るぞ」っていうのがわかる?

柴田:そう、「これはいいかもよー!逃すなよー!」って瞬間。自分に喝を入れるみたいな。シンプルに鳥肌が立ったりしませんか?「おぉー!」って。あれが楽しいかなぁ。

水野:僕は今、心の頷きをすごくしています。

柴田:あの瞬間って、「自分すごいぞ」みたいなことの言い換えかもしれないですけど、興奮しますよね。「いいぞ、いいぞ」って。

水野:これ、勝手に思い込みですけど、遠いかと思ったら意外と近いひとだったかもしれない(笑)

柴田:ホントですか!やったー。嬉しいです。

水野:ひとり喜びの瞬間はありますよね。ひとり興奮というか。

柴田:ありますねー、そっちのほうが手放しに喜べるかも。ライブってどうしても「ここに来てくれたひとにどうにか満足して帰ってもらいたい」みたいな気持ちばっかりになっちゃうときがあって。あと、「ここでガッカリさせたくない」とか。

水野:違うものを背負って。

柴田:そうですね。自分を好きで来てくれていると思うのですが、来てくれたから、どうにか、もっと楽しく帰ってほしいみたいな感じで。それは音楽と何かが違う気がするので。だからひとりの喜びは、ただただ嬉しい。ただただ楽しい。

水野:ライブだとやっぱり、相手がいるってことの難しさがね。

柴田:そうです、本当に。

水野:喜んでほしいとか楽しんでほしい気持ちはある。でも、相手の気持ちはコントロールできないから。こっちがどうこう言っても、限界もあるし。でも自分で作っているときは、自分の喜びって無限大。いくらでもハイになれる。

柴田:相手と喜びを作っていくのと全然違いますよね。単に、植物がばんばん生えるくらいの喜びですよね。


私の魂が続く限りはやる。


水野:苦しくはならないですか?

柴田:苦しく…。

水野:「書けねー」、とか。

柴田:「書けねー」とかはあります。「アレンジできねー」とか「歌えねー」もある。だから結構、苦しいこと多いかもしれない(笑)。「あーもう疲れちゃった」とか。

水野:でも、やめようと思わないでしょう?

柴田:そうですね。まぁちょっと、ビギナーズラックがずっと続いているような感覚かもしれないですけど。やめようって思わない。けど、考えたりはします。「自分がやめるかな?」って。たとえば、お客さんがたったひとりになって、そのひとりもいなくなって、ゼロになって、誰も聴いてくれるひとがいない。そうなったときでも、自分はやるのか、とかは頻繁に考える。

水野:今のところ、答えは出ています?

柴田:年上のミュージシャンとかエンジニアさんの姿を見たとき、みなさん魂を持ってやっていて。音を聴いたときとかに「このひとは一生、音楽について情熱があるんだな」というか。その魂を思うと、お客さんがいないことはやめる理由にならないだろうなって。もしやめるときが来たら、違う理由かなって気持ちがある。だから、聴いてくれるひとがいなくなっても続けるか、ってことについての答えは、私の魂が続く限りはやるかなって。

水野:その魂って、それこそ言語化できないというか「大好き」と、近いようで遠い気がするんですよ。

柴田:そう感じます。わかります。

水野:執着ともいえるし。なんですかね。でも、どこか共有している何かはあると思うんですよね。

柴田:それってもしかしたら、自分にはわからないかも。私が誰かのものを聴いて、「これは魂が込もっているな」って思うぐらいしか、わかるすべがない。それほど曖昧なものですけど、まぁ情熱かなぁ…とも思います。

水野:そうですね。

柴田:「本当にこれが好きだ」とか、「どうしてもこれが好きだ」とか、「これをやってやる」みたいなものもひっくるめて、情熱。魂。なのかなぁ。

水野:魂という部分でいうと、30歳ぐらいになったとき、「いや~自分、本当に音楽なのかなぁ?」って思ったときがあったんですよ。

柴田:ええー!

水野:僕の場合、先輩のミュージシャンとか才能あるひとたちにたまたま現場でお会いして。そのときに、「いや、このひとは音楽に選ばれている」って、思うひといるじゃないですか。

柴田:います、もちろんいます。

水野:本当に音楽が大好きで、寝食を忘れて。「好き」の度合いが尋常じゃない。自分、浅いなぁ、甘いなぁみたいな。魂と呼ばれている、「なんか作りたい」とか「なんかやりたい」みたいな気持ちが自分にあることは疑いがないんですよ。だけれども、その出口として、僕はたまたま音楽の世界に入れて、やれているだけであって。もしかしたら違うところが自分の出口なのかもしれない、とか頭でっかちに考えたことがあって。

柴田:うんうん。

水野:それでいろんなひとに、会ってみたり。違うことやってみたり。わーわーやっていたんですよ。

柴田:わーわー。

水野:だからこそ、この詩集とかを読んだときに、「もしかしたら、このひと音楽じゃないところに魂を持っていらっしゃる方で、違うところをやられている方なのかもしれない」って思ったんです。

柴田:はい。

水野:でも、今お話を伺ったら、やっぱり音楽に対して魂が。

柴田:やる気。

水野:やる気とか、パッション的なもの。

柴田:みんなが持っているもの。

水野:僕は今、堂々巡りして、「いや、意外と俺、音楽好きなんだな」って。知識がなかったり、努力が足りなかったりはするけど。いきものがかりというグループが、非常に世の中にひらけたというか、ポップなところにいて。商道的とか売れ線とか、まぁいろんなことを言われてきて。全部ひっくるめてそういう存在で。

柴田:はい。

水野:そういうところで育った自分が、さっき話でいうと、「別に、最後のひとりが去っても書いているだろうな」みたいな気持ちを最近、持つようになったんですよ。

柴田:すごい(拍手)。

水野:だからすごく心の中で頷きボタン押したっていう話を、今5分ぐらいした(笑)。

柴田:人生みたいな話になっちゃいますけど、それぐらい案外、繋がっているんですよね。人生とか生き様とかに。だから、こうやって真面目に考えて向き合うのも悪くないっていうか。むしろ全員やるほうがいいよなぁって思う者からすると、私も頷きボタンを連打したくなる感じです。

水野:うん。

柴田:水野さんのその姿勢にすごくパッションをもらいます。作品ももちろんですけど。


「はぁ・・・、あんなこと歌っちゃった」


水野:ちょっと話が展開しますけど。おひとりでライブをやられているときや作っているときの個人としての自分。ミュージシャンと一緒に演奏したり、フェスに出たり、集団のなかにいる自分。どっちのほうが楽ですか?

柴田:私はまわりのひとがいるほうが、圧倒的に楽です。

水野:あぁー、そうですか。

柴田:やっぱりひとりはしんどいなって思います。

水野:僕は本当にひとりで舞台に立っているひと、めっちゃ尊敬します。ようやるなって。

柴田:本当ですよ。自己顕示せねばいけないのも、自分で、「よくやるな」って思います。

水野:でも今日お話ししていても思うけど、めっちゃ「私を見て」って感じじゃないじゃないですか。

柴田:元来そうなんですよ。

水野:「申し訳ないんですけど、たまたま出ています」みたいなオーラが出まくっているじゃないですか(笑)

柴田:そう。まぁ、やるのは好きだし。そのへんはあんまり言わないでおこうみたいな感じで。結局、「恥ずかしいけど、好きだから」とは思って。

水野:どうやって処理しているんですか?

柴田:恥ずかしさとかですか。やっぱりライブ後は1時間ぐらい散歩したり。家に帰らないで、ぐるーってまわったり。

水野:それは何を落ちつかせているんですか(笑)?

柴田:エネルギーをゼロにするみたいな。「あー、疲れた、もう帰って寝よ」って感じにするというか。そのまま家に帰るとたしかに、「はぁ…。」「はぁ…。」って、ワンアクション起こすたびに。洗い物すれば、「はぁ…」ってなって。シャワー浴びれば、「はぁ…」ってなったりするので。とりあえずぐるぐるぐるぐる散歩して。

水野:そうですよねぇ。

柴田:でももう常に、毎晩やっています私は。「はぁ…、あんなこと歌っちゃった」とか。

水野:自分で書いたのに。

柴田:そうです。そこが不思議ですよね。だからもう、言い訳するのもそろそろやめようかなとは思っているんですけど。

水野:でも人間ぽいっちゃ人間っぽいですけどね。

柴田:そう、私は人間をやめられないんですよね。


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