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『今日も書けない』 part3


ひとにかけた言葉が、まわりめぐって自分にかけていた言葉だった。
ということはよくあるものです。わかったような顔をして、さも与えてあげたかのような顔をして渡した言葉をいま読み返してみれば、のどもとに切っ先を向けられているのは自分だった。そういうお話。

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(テケさんは興味ないみたいですが)

<自分なりの曲作り与太話。『今日も書けない』シリーズです。定期購読マガジンをご購読の皆さん向けの記事です>

スタジオミュージシャンや音楽プロデューサーの皆さんは、もともとご自身が誰かに師事を仰いでこの世界に入ってきたひとも多く、いわゆる”弟子入り志願”みたいなことを受けることがあるそうです。弟子という言い方はしなくても”ボーヤ”とか”アシスタント”みたいな呼ばれ方をされることが多いでしょうか。後輩を育てる文化というか、システムみたいなものがあって、そのなかで揉まれながら技術を磨かれていく方々にはいつも敬意しかありません。

自分には全く縁のないことだと考えることすらしなかったのですが、まさかのまさかで、僕も1度だけ「弟子入り志願」を受けたことがあります。数年前の話です。

もちろん受けられるはずもなく(受けても教えられることもないし、彼のほうが技術が高いくらいだったかもしれません)いろいろな意味で、自分のところにきてしまった彼には申し訳なかったのですが、何か少しでも渡せるものはないかなと考えて、自分が音楽をやっているなかで大事にしようと思っていることを書いて、送りました。

ひょんなことから、久しぶりに読み返していたら、これ、結局、自分に向けられているなと。どこか才能にとりつかれてしまっているひとや、音楽の魅力に夢中で世俗のことなんかどうでもいいと思えるひとには、必要のないことばかりなんですが、自分のような才能も覚悟も中途半端な人間には、こういうことを自分に言い聞かせていないと、やっていけないと、今も昔も思っているのだと思います。

夢に魅せられ、夢に酔って、夢に溺れて、夢にがんじがらめになって、そして自分を保てなくなってしまうひとも多くいるので、緊張して真面目そうだった彼の姿を見て、いつか逃げ場所を用意してないとつらくなるよと伝えたかったのかもしれません。




いきものがかり水野です。
先日は、講義を聞いてくださってありがとう。
頂いたお手紙の返信をするのに時間がかかってしまいました。 すみません。
僕には弟子をとることのできるような器量はありません。「育てる」「教える」という技術は、「つくる」 という技術とは別のところにあるものです。僕にはとくに前者の技術がありません。また、物理的、 時間的な余裕もありません。そんなわけで〇〇くんの期待には応えられません。

〜中略〜

でも、こんな僕にでも「弟子になりたい」 などと思ってくれるひとがいるのだと、
その気持ちはとても励みになりました。ありがとう。その感謝の気持ちも込めて、自分が創作を生業とするうえで大事にしていることはなんなのか考え直してみました。期待に応えられなかったかわりといってはなんですが、それらを○○くんへの言葉にかえて、以下にお贈りします。つまるところ僕が伝えられるのは、文字にすれば、 この程度のことです。

〜中略〜 

それでは、またいつの日か!

1 人生は選択。なにを守るか、決めておく。すべては守れない。
2 価値とは、他者とのあいだにあるもの。ひとりよがりにならない。
3 純粋であるとか、清貧であるとか、 そんなくだらないことに酔わない。とらわれない。逃げない。
4 たとえ、人生をかけてつくろうとも、良いものは良く。 悪いものは悪い。その事実のみに従え。
5 ほとんどの問題は技術と蓄積で解決する。そこから逃げて、 簡単に才能や運の問題にしない。
6 でも、最後は運であるのも事実。 努力ですべてが解決するなどとは思わない。覚悟する。
7 出会いをなめない。ひとりでたどり着ける場所は、 たかが知れている。
8 ちゃんと食べて、ちゃんと寝る。そのために必要な金は、稼ぐ。
9 社会のなかで詞を書くのだから、社会のなかにいなさい。 生活をしなさい。
10 あなたがすばらしい作品をつくらなくても、 あなたを愛してくれる人をみつけておきなさい。
11 自分が詞を書く理由、目的について、人生を通して、 考え続ける。
12 それはあなたの欲がなんなのか、考えることにつながる。 自分の欲に向き合え。
13 性欲、金銭欲、名誉欲、権威欲… あなたも含めた人間が持つそれらを、なめない。 ちゃんと考える。
14 その欲を達成するために、「詞」ではないと思ったら、躊躇せず、 違う道へ進みなさい。
15 「自分らしさ」と「理想像」を混同しない。
16 他者を言い訳にしない。理不尽も不合理も、それは、 あなたが向き合わねばならないもの、そのもの。
17 死ぬな。創作をあなたから奪い取っても、 あなたに生きる意味はある。絶対に。自分ひとりで、 あなたの命の価値を決めるな。
18 いずれにしても、すべてのことにたいして、よく、考えなさい。 何度も。
19 本当につらいときは、笑ってしまえ。最後の一歩の前で、笑え。
20 なんとかなるものを、全力でなんとかする。 なんとかならないものは、覚悟して、あきらめる。生きなさい。


自分も頑張って、生きないとなぁ。

この言葉たちに、自分自身が全然、応えられてないですな。
こぼれてくる言葉は鏡のように、自分を映していて。

指先はこちらに向けられています。



水野良樹

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