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関取花 連載第19回 家族LINE

2020.04.08

家族LINE

先日ようやく、家族四人のLINE グループを作った。個別にはよく連絡を取っていたのだが、実は全員のグループは作っていなかったのである。

私にとって父、母、兄はもちろん家族以外の何ものでもないのだが、この人だから話せることというのがそれぞれにあるので、そこはわざわざまとめる必要がなかった。そして私以外のみんなも同じ感覚だったのか、誰もこれまで家族LINEを作ろうとしたことがなかった。ちなみにみんなでご飯に行く時などは、誰かが誰かに自然と伝達する形でなんとかなっていた。

父とは、互いの仕事の状況やそれに伴う心境の変化などについてやりとりすることが多い。でも決して相談をし合うわけではなく、「こちらはこんな感じ、まあお互い踏ん張りどきですな」など、報告といった感じだ。
二人で飲みに行ったりもするのだが、多くは語らない。でも、その奥に隠された葛藤はなんとなく理解し合うことができる。それが心地良い刺激となって、自分も次の日からも頑張ろうと思える。私にとって父はそういう存在だ。

母とは割と常に連絡を取り合っている。何を話しているかというと、特になんでもない話だ。「庭の花が咲いた」とか、「この動物の動画が可愛い」とか、「最近のダイソーがすごい」とか。自分が面白いと思ったことや良いなと思ったことを、バンバン送り合っている。
逆に仕事の話はほとんどしない。母とは楽しい話題をとにかくなるべくたくさん共有したいからだ。母はどんな小さなことでも何倍もの喜びを持って受け取ってくれる。私はそれだけで嬉しいし心が満たされるので、他の話はしなくてもいいのだ。

兄はというと、普段は滅多に連絡をとらないのだが、定期的になぜか熱く語り合うタイミングがやってくる。最近だと、そろそろ始まるアニメの話や読んで面白かった本の話、音楽の話なんかで盛り上がった。そこから派生してこんなサービスがあったら面白いかもねとかそんな話もした。兄は私なんかよりもさまざまな知識が豊富で、かつ視点が独特だ。だから彼の話は聞いているだけでもかなりタメになるし面白い。プライベートのことなど踏み入った話は一切しないが、べつにお互いそこに興味はないからそれでいい。

こんな感じで、私はそれぞれとそれぞれの話題で連絡を取り合っていたのだが、ここに来て家族LINEはやっぱり必要だと感じた。新型コロナウィルス感染症が拡大している今、さまざまな情報が行き交う中で、家族四人の共通認識を今一度確認し合う必要があると思ったのだ。

関取家の暗黙の了解として、“緊急時はとりあえず集まる”というものがある。たとえば少し前の大型台風の時も、誰がそうしろと言ったわけでもないが、直撃するだろうと言われていた時間には家族全員が家に揃っていた。集まったところで台風の威力が弱まるわけではもちろんなかったが、安心感だったり心強さだったりを確実に得ることができた。
しかし、今回ばかりはその暗黙の了解は必ずしも通用しない。むやみに私や兄が実家に帰り家族全員が集合することで、防げたかもしれない最悪の事態が起きてしまう可能性だってあり得る。いつも通りに、では通用しないと思ったのだ。

ということで、そこらへんみんなはどう思っているのかを家族LINEで聞いてみたところ、家族全員が同じ認識を持っていた。感染しないことはもちろん、感染させないことを考えて、今回私と兄は一人暮らしのそれぞれの家で過ごすと決めた。その代わり無駄な心配をしなくて済むように、近況報告は逐一ここでやりとりして行こうということになった。

いざ家族LINEをはじめてみると、面白い発見があった。私はそれぞれとしか連絡を取り合っていなかったので、正直家族全員となるとみんないつもと違う雰囲気になってしまうんじゃないかと思ったのだが、全然そんなことはなかったのである。

父は父らしく、多くは語らず必要最低限の、でも今ある確かな情報を共有してくれた。そこに加えて、自分の会社ではどのような対応を行なっているのか、それに関してどういった心境なのかも添えてくれた。
母は、ちょっとほっこりするような記事を見つけて教えてくれた。みんなが深刻なニュースにしかめ面になりそうな時にも、身近にある小さな喜びを教えてくれるのがなんとも母らしかった。
兄もまた兄らしく、こういった状況の中でも心の健康を保つためにはどのようにしたらいいのか、溢れる情報たちとはどのように付き合って行くべきか、といったまた違う視点での考察記事や、自身の考えを共有してくれた。

こうして同じことと向き合っていても、それぞれの捉える角度があって、一見バラバラに見えても実は互いにうまく補完し合っていたりする。そして最終的には不思議と良いバランスになっているあたり、やっぱり家族ってすごいなと思った。

ちなみに私はというと、率先してグループLINEを作ったくせに、みんなが共有してくれる話を「すげー」「そうなんだ」「知らなかった」とか言いながら、基本的には関心しながらも眺めているだけである。結局私は妹で、末っ子で、威勢と出だしは良くても最後はみんなに助けられてばかりなのだ。思えば小さい頃からずっとそうである。でも、もしかしたらそれが関取家での私の役割なのかもしれない。

こんな状況が続くと、自分には何ができるだろうと考え込んでしまったり、無力さを感じてしまうことも多い。でも、事態が大きい時にこそ、身近な場所や人たちにもっと目を向けたらいい。きっと自分の意外な役割や、今どうするべきかを気付かせてくれるはずだ。
家族LINEまだ作ってないよという方は、ぜひこの機会に作ってみたらいかがでしょうか。

関取花アー写1912小

関取花(せきとり・はな)
愛嬌たっぷりの人柄と伸びやかな声、そして心に響く楽曲を武器に歌い続けているミュージシャン。昨年はNHK「みんなのうた」への楽曲書き下ろしやフジロック等多くの夏フェス出演を経て初のホールワンマンライブを成功させた。2019年5月8日にユニバーサルシグマよりメジャーデビュー。
ちなみに歌っている時以外は、寝るか食べるか飲んでるか、らしい。
関取花オフィシャルサイト
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ソングライター水野良樹が主宰するHIROBAの公式noteです。 『考えること、つながること、つくること』 その3つを豊かに楽しむための広場=HIROBAをつくっていく試みです。 定期購読マガジン『HIROBA公式マガジン』のご購読もよろしくお願いします。

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