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新しい声だからこそ挑戦したい

HIROBA TALK 
水野良樹×藍井エイル

2019.08.29

アルバム「FRAGMENT」で「今」という楽曲を提供させていただいた藍井エイルさん。
同じ時期に“自分を見つめる時間”を持ち、同じようなことを考え、同じような景色も見たであろうことは偶然ではないような気がしています。
楽曲制作の打ち合わせで語ってくれた夢や迷い…その続きが聞きたくて、藍井さんに会いに行きました。

新しい声だからこそ挑戦したい

水野 藍井さんのアルバム「FRAGMENT」に収録されている、「今」という楽曲をつくらせていただきました。


藍井 ありがとうございました!お休みしている間に歌を練習するときは、いきものがかりさんの曲もよく課題曲にしていました。私、水野さんの書くメロディラインがずっと好きで。休み中に人生初のひとり旅で青森に行ったときも車を運転しながら、ずっといきものがかりさんの曲を聴いていました。

水野 えー、そうなんですか!うれしいです。

藍井 今回、「日常」がテーマのアルバムを制作するにあたって、大好きな曲である「気まぐれロマンティック」のようなキラキラしたポップな楽曲が入っているとアルバムのなかでも輝くのではないかなと思ったんです。

水野 ありがとうございます。「気まぐれロマンティック」を気に入ってくださっているということは、打ち合わせでも伝えてくれましたよね。

藍井 はい。

水野 僕は楽曲提供をさせていただく際に、例えばいきものがかりの曲で言うのならば、「ありがとう」のような曲がいいのか、「じょいふる」や「気まぐれロマンティック」のような曲がいいのか、自分のつくる曲のどの要素を必要としてくれているのかを気にするんです。

藍井 はい。

水野 最初の打ち合わせのときに、藍井さんにはすごく明確なイメージがあって。「気まぐれロマンティック」を例として挙げてくれながら、今までの藍井さんの力強いイメージにプラスして、もうちょっと女性的な部分やかわいさを、うまくブレンドしていきたいというビジョンを持っていましたよね。

藍井 はい。

水野 なので「そこなんだ!」と。ならば、方向性がわかって、やりやすい!という感じでした。

藍井 ありがとうございます。

水野 お休みを経て、ご自身のスタンスを広げていきたいという気持ちを持つようになっていったんですか?

藍井 そうですね。ボイストレーニングを重ねて声が変わりましたし、新しい声だからこそ挑戦したいという気持ちがありました。

水野 いろいろな歌い方ができるようになって、技術的にも進化したという感覚なんですね。

藍井 そうですね。不自由がなくなって、自由が広がっていっている感じです。

水野 違う表現ができるという思考になるのは、プレーヤー感があるからこそで、おもしろいですね。技術的な進化もあって、これまでの藍井エイル像にプラスして、「もっと中身を出してもいいんじゃないか」というところにつながっていったんですね。

藍井 心にも余裕があるんですね。たとえば、声のかたちを表現すると、以前は刺々しかったんですけど、今は人間らしい部分もあり、だんだん丸くなってきていますね。

水野 変遷があるんですね。

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藍井 はい。今、「今」に会えた…(笑)。

水野 ややこしい曲のタイトルをつけちゃいました(笑)。

藍井 はは(笑)、今、新しい声をもった状態で、「今」に会えたことが本当にうれしいです。

水野 このタイミングで、僕ら(=いきものがかり)もちょうど休んでいて、藍井さんと同じようなことを考え、同じような景色も見たでしょうし、出会いのタイミングがリンクしたこともおもしろいですよね。

藍井 そうですよね。

水野 こじつけのようになっちゃいますけど、必然なのかなと思います。

藍井 休みがあったからこその思いがあって。

水野 はい。

藍井 わかり合える部分が変わってくると思うんです。

水野 なるほど。

藍井 お互い、活動を休止して、また新たに始まっていくなかで、「今」の歌詞を見たときは勇気づけられましたし、刺さる部分もたくさんありました。ファンの方たちに対してということもすごく考えさせられましたし、ひとりで背負うのではなく、ファンの人たちと一緒に歩いていく。弱い部分を見せてもいいんだなと、自分を許せるような曲でもあります。

水野 はい。

藍井 いろいろな気づきを与えてくれる曲です。

水野 制作の打ち合わせは正味1時間ぐらいでしたよね。

藍井 はい。

水野 あのとき、藍井さんが言ってくれたことや、藍井さんのたたずまいが、「今」の物語を引き寄せていると思うんです。僕が感じたのは、藍井さんご自身のやりたいことがあって、こんな挑戦がしたいと言いながらも、いい意味で遠慮がちというか(笑)。「私、こんなことをやっていいのでしょうか」と謙遜されているように見えたんです。そこに好感が持てましたし、抱えている迷いも含めて、藍井さんの魅力なんだろうなと。

藍井さんが気に入ってくれた

“愛情を欲張って 求めちゃいけないと思ってた
「わたしなんて」そんな口癖で逃げていたよ

というフレーズも、「今」というタイトルも。これらは、“いつか”ではなくて“今、この瞬間”にストレートに言い放った方が、藍井さんの現在の気持ちに合うだろうなと。

だから、僕が書いているけど、僕の言葉じゃないというか。これは藍井さんの言葉が、たまたま僕というフィルターを通して出てきただけだと思っています。

藍井 水野さんがそうやっていろいろ考えてくださったなかで「今」が生まれたからこそ、私は「今」の歌詞にすごく感動して、共感したんだと思います。

水野 これが、さらに次の作品につながっていくといいですよね。ほかの方が書く上でも。

藍井 そうですね。

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自分の音楽を聴いてくれる人と楽しい空間をつくることが、今の喜び

水野 今、藍井さんは、どういうところに歌う喜びを感じていますか?

藍井 誰しも絶対、必要とされたいじゃないですか。

水野 はい。

藍井 私にとって、一番必要とされるのが、歌っているときだったんです。必要とされていることがうれしい。最初はそういう思いだったのが、だんだんとファンの人との関わりが増えるなかで、応援してくれている気持ちを強く感じるようになって。思いを届けてくれる人たちに、歌で恩返しをしていきたい、一緒に楽しみたいという思いにたどり着きました。自分の音楽を聴いてくれる人と楽しい空間をつくることが、今の喜びですね。

水野 ああ、ほんとに真面目なんですね。

藍井 いえいえ(笑)。

水野 僕もそうですが、ある種の承認欲求から始まって、それが認められるようになると、さらに期待に応えたくなる。一緒に共有していきたいと思う。その先にも、また楽しいことが待っているんでしょうね。

藍井 そうですよね。

水野 休みを経て、前よりももっとファンの方々を信じられるようになったんじゃないですか?

藍井 はい。ファンの皆さんの前でも、自分の素に近い部分がどんどん出てくるようになりました。前は、自分から張り詰めるような空気をつくってしまっていたところもあって…。それでは誰も幸せになれないし、私も「こうじゃなきゃいけない」というマストビー(must be)精神になっていたので…それがよくなかったですし、よくないことを知ったからこそ、もう同じようにはならないようにしようと思っています。

水野 いやぁ、おもしろいですね

藍井 自己暗示のような…。強い思いは大事ですけど、変な方向に行くと、自分を追い込んでしまう部分もあるのは怖いなと思いました。素の自分に戻る瞬間は、絶対に必要ですよね。

水野 そうですね。エンタメをつくって提供する側には、外から求められる自己像を、しっかりと見せないといけない瞬間があるじゃないですか。

藍井 はい。

水野 僕らも「いきものがかりとは、こういうグループだ」「こういう音楽をつくるべきだ」といった理想像を立てて、それを目指すことが正解だと思っていた時期がありました。でも、それを追い求めるだけだと、独りよがりで、実は正解ではないかもしれないということに気づいて。みんなの期待に応えているつもりで、誰もハッピーにならないという…ほんとに難しいですよね。

藍井 難しいですよね。

水野 自分たちは見せないほうがいいと思っていたことでも、ファンの方々からすれば、それをちゃんと打ち明けてくれる方がハッピーに感じるよ、と言われることもあって。何が正解かわからないですよね。

藍井 間違ったことを間違ってないようにしていた部分もあったので。

水野 真面目ですね(笑)。

藍井 でも、隠されると余計につつきたくなっちゃうじゃないですか。お互い笑って済ませられることも、笑えなくなってしまうと、ちょっと張り詰めちゃったりするじゃないですか。それはファンの人や自分の音楽だけでなく、友達に対してもそうだったんです。

水野 家族や友達との関係に近いですよね。

藍井 張り詰める空気を自分でつくっていたなというのは、休むまで全く気がつきませんでした。休んでからは、友達との関係性や距離感も変わりました。

水野 一回、追い求めて、そこで得たものがたくさんあって。それだけでは前に進めないから、休んで、客観視して、追い求めるところだけではつかめないものを知って。その全部の一連がないと、今にたどり着いていない。そこを通ったことは大きいですね。

藍井 通ってよかったって思いました。

水野 そうですね。無駄なことは何一つない。頑張ってきた年月は絶対に大事で、それを踏まえて次のステージに立っている。

藍井 視野も違いますよね。いったん落ち着いた後の視野と、とにかくやるぞって意気込んでいるときの視野ってこんなに違うんだなって。張り詰める空気をつくっていたときの自分は周りが見えていなかったんだと思います。周りが見えていなかったからこそ、歌詞も主観的なものが多かったんですよ。今は客観的に見ながら歌詞をつくることができるようになりました。

水野 どちらの視野も知っているのは強いですね。

藍井 いいことですよね。

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藍井 水野さんは作品をつくるために、どういったインプットをされているんですか?

水野 インプットと思って何かすることはないんですよ。作品をつくるために、本を読む、映画を見るということはなく、普通の生活をしていて(笑)。ただ、場面場面の気持ちを覚えていくようにはしています。僕はよく喫茶店で書き仕事をするんですね。そうすると、別れ話をしているカップルを見かけることが多くて。

藍井 えー、そうなんですね!

水野 別れ話の場面って、一対一の関係性で会話が進められることが多いですよね。パッと見ると、彼氏は未練があるなとか、彼女はもう前に進もうとしているなとか、その二人にしかない空気感がある。その気まずさとか、未練を持っている側が出す言葉の焦りとか。あくまで、その空気感をパッケージ化するんです。持って帰る。その場の空気を冷凍保存するというとわかりやすいでしょうか。それは曲の題材になるんですよね。

誰かを好きになるときの感情は人によって、それぞれ違うものですよね。それらの、本当は別々の感情というものを、どれもすべて「好き」という言葉で表して、「好き」という名前の箱に無理やり全部入れちゃっている。その感情のニュアンスの微妙な違いを、いかに崩さずに歌のなかに閉じ込めるかが大事だと思っています。

藍井 すごいですね。

水野 空気感は大事にしておきたいんですよね。

以前、親戚のお葬式で、式が終わった瞬間に尾崎紀世彦さんの「また逢う日まで」が流れたことがあって。突然、斎場に「ダッターダダーダダ、ボン」って。

藍井 はい。

水野 あまりに唐突に明るい曲が流れて、「何、何?」と一瞬、会場がザワッとなったんですが「生前、故人が大好きで、カラオケで毎日歌っていた曲です」という葬儀屋さんの説明が加えられて。それを聞いたら、みんな急に泣きはじめちゃって。

亡くなったおじちゃんが好きだった曲だから、いい意味で送り出すというか、「死という悲しいことがあったけど、前向きに生きていこう」といった感じの空気を、その葬式に参列した人がその瞬間、共有したんですね…「音楽って本当にすごい!」と思った瞬間で。

藍井 ほんとですね。

水野 前向きになろうと思った、その瞬間の空気感は、まさにほんの一瞬でしたけれど、曲をつくる上ではものすごく貴重な題材になるんですよ。もしも、恋人を失った人が、たまたまラジオから流れてきた僕の曲を聴いたとする。そのときに、その人を傷つけてしまわないないだろうかと想像するんですけど、あのときの「また逢う日まで」みたいに、少しでも前向きになってもらいたいじゃないですか。そこまで考えて、なんとなく想像に入れて書く。そういう意味でのインプットはしていますね。

藍井 インプットの仕方がとてもリアルですね。つくられたものからインプットするのではなく、実際の人間関係を通して感じたものだからこそ、つくり手の水野さんは男性なのに女性目線でいろいろな展開を繰り広げるのが上手なんですね。私が男性目線で物事を見ることができないのは…リアルなインプットがもしかしたら苦手なのかもしれません。インプットの方法をもっと増やしていきたいなとは思っているんですけども。

水野 僕がデビューした頃、先輩たちのアドバイスもあって、いろんな音楽を聴かなきゃとか、いろんな映画を見なきゃと、すごく焦っていた時期もありました。もちろん、そこで得られたものもありましたけど、リアルなものじゃないと、説得力が出ないような気がして。

そういった意味では、藍井さんはご自身の生活を通して、リアルなインプットをたくさんしているんじゃないでしょうか。というのは、ずっと頑張ってきて、休んで、歌と向き合って、友達との距離感も変わってと、これまでのご自身の経験を話してくれたじゃないですか。その経験こそが、まさにインプットで。

「悩んで、考えて、こういう答えを出しました」ということを積み重ねていくと、それは藍井さんだけのリアルな体験で、だからこそ、僕がつくった「今」を歌ったときに、同じ言葉を歌ってもほかの人にはない説得力が出る。そういう生々しい、身になるインプットをされているように思いますよ。

藍井 確かに、メモしていることだけがインプットじゃないなって今思いました。

水野 そうですね。

藍井 何かあったらメモしておく。それがインプットだと勝手に思っていましたけど、メモしなくても自然と…。

水野 体験している。

藍井 そのときの強烈な気持ち自体がインプットだということですよね。

水野 そうですね。だから、集中して周りが見えなくなる瞬間も、おそらく誰もが経験できることではないと思うんですよ。僕にもそういう瞬間はありますが、普通は集中してほかが見えなくなるまで深く潜れないですから。経験した上で、さらに、それを客観的に見られるということは、すごく強いですよね。

藍井 そうですね。

水野 だから今、いい意味の余裕が生まれているんだろうなと。

藍井 でも、日々感じる寂しいことのひとつとして、何かに簡単に夢中になれなくなっていく自分を感じます。新しいことに挑戦しようとすることは、力を使うじゃないですか。新しいことに挑戦するときの、その力の入れ方というか、「さあ、やろう」と動くまでの腰がすごく重くなっている自分に気づいて…。前までは「とりあえずやってみよう!」だったんですけど。

水野 すぐ動けたんですね。

藍井 そうです。でも、だんだん大人になっていくとともに、頭でっかちになって…。これをやるなら、どういう効果があって、どういうものを得られて、どういうものを失うか、時間をこれくらい使うとしたら…そこまで天秤に掛けたときにやる必要があるだろうかとか、だんだんそういう考えになって。

水野 プロデューサー視点が強くなってきた(笑)。

藍井 そうなんですよ(笑)。そういう自分に気づいたときに、一瞬、寂しくなるときがありませんか?

水野 ものすごく、よくわかります。20代の頃は勢いに任せて、元気に何日も無理しても大丈夫でしたが、30代に入って知人を亡くしたり、同世代で病気になってしまう人が出てくると、自分にも残り時間というものがあるんだなと思うようになりました。そうなると、自分の力をどのくらい掛けていいんだろうかって踏みとどまる瞬間もあって。俯瞰して、客観的に見て、今どっちの道に進めばいいんだろうって深く考えることは悪いことじゃない気がします。そういうフェーズなのかなって自分は思うようにしたいですね。ただ、藍井さんが言うように、やると決めたら夢中で全力でやりたいですよね。

藍井 やりたいですね。

水野 中途半端にしたくない。

藍井 だんだん中途半端になっていってる感じが自分のなかであって…前は、やろうと決めたら、絶対に中途半端にしなかったんです。

水野 それで苦しんじゃったり?真面目にやりすぎて(笑)。

藍井 そうなんです。なんでこんなに自分で自分のルールをつくっているんだろうと。「中途半端=悪」というようになっていたんですけど、今はほどほどにのめり込むっていうのも割と大事なことなのかもなと思っています。

水野 大事かもしれないですね。難しいな。どっちがいいんだろうな。

藍井 きっと、どっちもいいですよね。

水野 そうですね。どっちもいいっていうのは正解かもしれない。

藍井 ただ、幼いときはピリピリしやすいじゃないですか。幼いながらに主観的だからこそ、これだと思ったら、それを100%信じる強みはあるけれども、人に対してちょっと攻撃的になってしまったりする部分を考えると、夢中になるのもいいけど、客観的になるのもいいなと思って。その両方は、大人じゃないと手に入れられないことだって考えたら、成熟されたものなのかなとは思いました。

水野 そうですね。確かにその成熟にたどり着ければいいけど…難しいんだよな(笑)。

藍井 難しいですよね(笑)。

水野 極端はよくないんでしょうね。

藍井 私もそう思います。

水野 難しいけど、共存させようとすることが、実はいいものを生み出すことにつながっているのかもしれない。

藍井 平和も生まれますもんね。

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ありのままで感じたものを歌詞や曲にしていきたい

水野 そうか、考えたら、藍井さんは…今、そうですもんね。数年間頑張ってきて、藍井エイル像をつくってきた。そして、お休みを経て、ファンの皆さんの前に立ったときに、よりハッピーな空間が開けているわけですもんね。だから、突っ走って極端に進んでいたときとは違って、ある種のバランスを手にしたときに、より多くの人をハッピーにしたり、自分自身も楽になったり、全部、プラスに動いていますもんね。すごいなぁ。

藍井 そうですね。特に復帰してからは、お客さんの気持ちと私の気持ちはリンクするんだなということを、あらためて感じました。私が張り詰めるとお客さんも張り詰めてしまう。でも、私がリラックスしていると、お客さんもリラックスして…。

水野 連動するんですね。

藍井 はい。そのリンクがすごいなと思っていて。自分では隠していたものも、結局、全部透け透けで。私がオープンな状態だと、お客さんも笑顔でゆとりを持っていろんなことを聞いてくれるんです。だから、ゆとりが平和を生むんだって(笑)。

水野 感情によって、ステージングも変わるだろうし、もちろん、MCでしゃべる言葉も変わるから、空気が変わるのはわかるけど…リンクしていく、それはおもしろいですね。でも、確かに人と人との関係性って、自分の感情が実はほかの人との感情ともつながっているというか、こっちが笑うと向こうも笑うし、こっちが泣いていると向こうは泣いていなくても、何か知らないけど悲しくなるような。

藍井 そうですね。いい感じの空気のなかに、1人だけすごく不機嫌な人がいると、みんなに不機嫌な感じが連鎖していくじゃないですか。その逆で、誰かがハッピーでいると、だんだんハッピーが広がっていくような感じなのかなと思いました。

水野 それはステージや作品をつくる身からすると、大事なポイントですね。よく言うじゃないですか。「私が楽しんでいないと、みんなも楽しめないでしょ」って。決めフレーズみたいに言うけど、あれはけっこう、ほんとですよね(笑)。

藍井 絶対そうですよね!

水野 本質なんでしょうね。

藍井 学生のときに作文を発表することがあるじゃないですか。ガチガチに緊張している人が作文を読むと、作文の内容が全く入ってこないで、その緊張している人が気になっちゃうじゃないですか。そういう感じですよね。

水野 なるほど、なるほど!わかりやすい。

藍井 ライブでこちらがガチガチになっていると、お客さんも構えちゃいますもんね。

水野 それがエンタメなんだな。笑顔って大事(笑)。

藍井 大事ですよね。

水野 その楽しい空気をどうつくるかは、大事なポイントですよね。

藍井 そうですね。藍井エイルチームはみんな仲がよくて。

水野 いいことじゃないですか。

藍井 会話の頻度も高いんですよ。チーム内で嫌な空気を持つ人がいないからこそ、みんなが笑顔でハッピーで、私も藍井エイルというものをもっとよくしていこうって安心して思えるんです。まさに笑顔の連鎖ですね。そうして今度はお客さんにもその笑顔を広げていくことができるので。

水野 いいチームを持てているのは素晴らしいですね。お休みから戻ってきて、チームの雰囲気は変わったんですか?それとも、もともとチームの雰囲気自体はいいものだったんですか?

藍井 変わった部分もありますね。私自身もすごく変わりました。休み方がわかるようになって、自分に余裕ができた部分もあるので。ある意味、人間活動が足りなかったのかなとは思いました。休まず、ずっとやりつづけてないと不安でしょうがない部分もありましたし。

水野 偉いな。真面目ですね。

藍井 ちょっと真面目すぎましたね(笑)。でも、真面目って言われても、全然、ピンと来なかったんですよね、今までずっと。

水野 わかります。本人は、自分はまだまだと思っちゃうんですよね。

藍井 そうなんですよ。

水野 チームの雰囲気は本当に大事ですよね。いきものがかりも、すごくいいチームに恵まれていますけど、ステージの空気は、ステージに上がっている人だけの空気じゃないですもんね。

藍井 そうですね。

水野 舞台袖の舞台監督の一声であったりとか、楽屋でケアしてくれるマネージャーさんの醸し出してくれる空気感だったり、全部ですよね。

藍井 全部ですね。

水野 それが結果、ステージにつながる。

藍井 本当に大事ですね。

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水野 いやぁ、おもしろいですね。この先、藍井さんの表現は、どう変わっていくんでしょうね。今回のアルバムは、今までにない藍井さんの素の部分や日常の部分が出ていて。そのアルバムを受けたライブツアーがあって、さらにこの先、いろいろなことを経験されて。次の作品で挑戦したいことやビジョンはありますか?

藍井 あらためて考えると、日常から離れないもののほうが自然体でいられるので、ファンタジーの世界に生きるというよりは、ありのままで感じたものを歌詞や曲にしていく、そういうことができたらいいなと思っています。
私の歌自体が変わってきているので、これまで歌ってきた曲に似ているものだとしても、今の声だと違う表現になるはずです。新たに挑戦していくこと、そして、過去にあったようなことをもう一度やっていくことも、全部が新しい挑戦になると思っています。

水野 時代ごとに生まれ変わっているんですね。いい感じで更新されていくというか。だから、昔の曲を歌っても当時とは全然違うものになるし、昔の曲のエッセンスが入った新しい曲を歌っても新鮮に感じる。

藍井 そうですね。この7~8年の間にいろんな気持ちの移り変わりがあって、少しずつ大人になって、その上で表現が変わってきている感覚がありますね。

水野 藍井さん、10年後どうなるんでしょうね(笑)。

藍井 どうなるんでしょう(笑)。

水野 楽しみじゃないですか?

藍井 楽しみですけど…10年後、全く想像つかないですね。
私を見つけてくれた人の言葉のなかで、今も大事に思っている言葉があって、「デビューしてからできるようになっていくのではなく、デビューして、これをやってくださいと求められたら、もうできてなきゃいけないから。それを考えた上で練習したりしなきゃいけないよ」と。それはすごく大事なことだなと思っています。「ちょっとやってみてください」と言われて、全くできないまま、ただ時が過ぎていってしまったら、本当はあった話もなくなっちゃうじゃないですか。だから、「できてなきゃいけない」っていうプレッシャーは、いいプレッシャーになっています。

水野 藍井さんは真面目だから、その言葉を聞いてちゃんと準備してくるだろうと、その方も思ったんじゃないですか。努力すると信じていなければ課さないですよ、きっと。藍井さんがそういう姿勢で臨んでいたから、実現して、今があるんだろうなと。すごくいい言葉ですね。

藍井 レコーディングが近いのに難しい曲で歌えなくて…それが悔しくて。6時間くらい歌った結果、声がガラガラになってしまったこともあって(笑)。

水野 ははは(笑)。

藍井 ほどほどがいいんだなって。

水野 そうですね。戻っちゃダメですよ(笑)。

藍井 はい(笑)。

水野 いいタイミングで出会って、ご一緒できて、うれしかったです。

藍井 こちらこそ、ありがとうございます!

(おわり)

藍井エイル(あおい・えいる)
北海道札幌市出身。歌手。
2011年10月にシングル「MEMORIA」でメジャーデビュー。
2019年4月に4枚目のオリジナルアルバム「FRAGMENT」、
8/28には最新シングル「月を追う真夜中」をリリース。
11月には、7都市8公演のライブツアー
「藍井エイル LIVE HOUSE TOUR 2019」が控えている。
藍井エイル オフィシャルHP

Photo/Kayoko Yamamoto
Text/Go Tatsuwa
Hair & Make/Yumiko Sano,Hideaki Mayumi


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ソングライター水野良樹が主宰するHIROBAの公式noteです。 『考えること、つながること、つくること』 その3つを豊かに楽しむための広場=HIROBAをつくっていく試みです。 定期購読マガジン『HIROBA公式マガジン』のご購読もよろしくお願いします。
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